上市町ではたらく

木の香りと温もりを地元の方へ

有限会社 木工房ひらい

地元密着で、木製建具や家具、襖、障子の製作・取り付けを行う、木工房ひらい(平井憲明代表)。現在は専務で3代目の平井拓磨さんが実質的な業務を行っていて、地域の人から頼りにされている。平井さんは、「人の役に立てる会社にしたい」と話す。株式会社 内山精工の内山さんからの紹介。

専務 平井拓磨さん(36)

専務 平井拓磨さん(36) 

 

衣食住の「住」を担う

役場前を富山方面へ行った道路沿いにある

役場前を富山方面へ行った道路沿いにある

――会社の成り立ちを教えてもらえますか?
 元々、祖父が栄町の自宅で始めたんです。指物師(家具職人)として、建具や家具など、木工製品に関わるものを作っていました。現在はこの場所に移転して2代目の父が社長を務め、従業員4人でやっています。
――そうなんですね。建具を始めとした商品の魅力ってどんなところにありますか?
 やっぱり木の香りや温もりが感じられるところですね。

木の香りが漂う社内

木の香りが漂う社内

――木の香りや温もり、いいですよね。お客さんはどんな方が多いですか?
 うちらの商売の特性は、地元密着。襖の張替えとかは、近くの人に頼んだ方が間違いない。だから地元の人の口コミが多いんです。個人のお客さんは50~70代の方がメイン。「建具」は若い人の認知度が少なく、50~60代にならないとその良さになかなか気づいてもらえない。今の新築住宅を見ても和室は減り、畳が少しひいてあるくらいで、産業としてはニッチな分野になってくる。会社としてや

製作中の建具

製作中の建具

っていくには安定的に回す売り上げが必要、つまり需要と供給のバランスなんですけど、需要が少なくなっているんです。いまは忙しくさせてもらってますけど、この先この業界がこれ以上発展することに望みをかけるより、本業をしっかりやった上で仕事の幅を広げていかないといけないですね。
――どんな分野に広げていかれるんですか。
 衣食住の、「住」ですね。家に関わること全般をやっていきたいです。「住」の分野でできることを伸ばしていきたい。いま、二級建築士の学科試

中央が社長の平井憲明さん

中央が社長の平井憲明さん

験に受かったところなので。
――そうなんですか。おめでとうございます!
 ありがとうございます。建具の業界では、2代目が跡を継いでいるのは県内でも7~8人と少なく、みんな不動産を始めたりと仕事の幅を広げていってる。それが大事だと思うんです。

次の日に持ち越さない

オール無垢材の米松板戸

オール無垢材の米松板戸

――平井さんご自身は、ご実家の家業ということですぐに会社に入られたんですか?
 いえ。高校卒業後は魚津のポリテクセンター富山で2年間、建築を学び、その後5年間、富山市の会社へ修業に行き、そこで基礎から学びました。有名な会社だったけど、不況で休んでくれと言われたり職人さんがどんどん辞めていったりした経緯があり、僕も退職しました。そんな時に父の誘いでこの会社に入ったんです。若い時は会社を継ごうとか思ってなかったけど、3年前くらいに実質的に代替わりをして私が実務を担うようになってからは、多少先のことを見ていかなければならないと思いました。30歳を過ぎてから気付いたことは多かったですね。
――平井さんは、内山精工の内山社長の後輩と伺いましたが…。
 はい。空手の後輩です。私は保育園の年中から空手を

旅館をイメージした吹抜け格子戸

旅館をイメージした吹抜け格子戸

始めて、20代のころは特に空手にのめりこんでいました。26歳のとき、内山先輩と一緒に団体戦で全国大会で優勝もしましたよ。でも32歳のとき、世界大会の代表を選出する合宿で眼下底骨折といって目の骨が折れて引退したんです。
――えっ! 目の骨が…!
 病院を3軒ほど回ったけどどこも異常なしって言われ、でも片目がおかしくて物が二重に見える状態でした。大きい病院で眼下底骨折だとわかったけど、もう時間が経ちすぎてて手術できないということでした。体はボロボロなんです(笑)。いまも週3回練習には行っているけど、試合には出ていません。スポーツをやっているとケガはつきものです。
――確かに、スポーツにケガはつきものですが、それは大変ですね。
 でも、空手から学んだことは多かったですよ。
――どんなことですか?

間仕切りによく使用される隅切襖

間仕切りによく使用される隅切襖

 単純に、「決めたことをやるかやらないか」。言うと簡単なんですが…。朝5分でも練習しようと思ってても、ほぼ9割の人ができない。社会人になってからできない理由って山ほどあるじゃないですか。でもそういうことを言い訳にしたくない。自分に甘えないことが大事だと思います。
――なるほど。仕事で活かされているのはどんな面でですか?
 自分に甘えず、見積もりや発注など何かしなきゃいけないことがあったら、次の日に持ち越さない。自分はそれが当たり前だと思っているけど、周りの人からは「テキパキしてるね」って言われます。

人の役に立てる会社

落ち着いた色合いの紬張り襖

落ち着いた色合いの紬張り襖

――お客さんに対して心がけていることはどんなことですか?
 お客さんからしたら孫みたいなものなので、自分ができることで役に立ちたいと思っています。本当に若い人が少ない業界なので、いろんな人に声をかけてもらえるんです。「あんちゃんみたいな人が必要なんだよ」って言ってもらえたら嬉しいですね。逆に、若いことで軽く見られて「こんな高いが!?」って言われることもありますが、そんな時も笑顔を絶やさずに応対しています(笑)。あと、見積もり・発注は即座にする。じゃないと溜まっていくから。現場に取り付けに行くことも多いので、遅くまで仕事しています。テレビを見る時間もありません(笑)。家に帰ってから子どもと一緒に寝て、朝は4時に起きて勉強しているっていう生活を3年前から続けています。
――すごくストイックですね。
 そうですね。でも、どんな分野でも大変じゃない仕事はないんじゃないですか。何か1つの形になるには10年ぐらい必要だと思うんです。ただ生活するだけだったらサラリーマンの方がよっぽどいい。でも、自分でこの会社を選んだので、腹くくってますよ。初めに大それた信念があったわけじゃないけど、継いだからには人の役に立てるような会社にしていきたい。そうじゃないと存在意義がないし、いずれは淘汰されると思います。

作業をしている若手社員

作業をしている若手社員

――では、社員の方をどんな風に育成していきたいと考えておられますか?
 「こうなってほしい」という思いはありますけど、僕も昔はしっかりしていなかったから…。言ってもやる子とやらない子がいますし。戸1枚でも工程がいっぱいあるので、仕事の時間を犠牲にして付きっきりで教えるわけにはいかない。社員がいかに自分で学び、やっていくかが大切ですね。
――なるほど。今後、チャレンジしたいのはどんなことですか。
 一級技能士の資格は持っているんですが、仕事の幅を広げるために、宅建(宅地建物取引主任者)の資格を取ることですね。あと、自分で製図してここに家を建てたいです。資格取ってすぐにできるわけじゃないから、道のりは長いですよ。
――わかりました。平井さん、今日はどうもありがとうございました。
 こちらこそ、ありがとうございました。


社内で使われている木製の扉

社内で使われている木製の扉

窓枠に入れられた障子

窓枠に入れられた障子

会社の中は木の香りが漂っていて、窓には障子が、事務室の入口には木製の扉が入れられていたことに驚きでした。さすが建具の会社ですね。私の祖父は大工さんだったため、木の香りの中で育ったせいか、どこか懐かしい感じを受けました。日本人の心をくすぐる木製建具や家具の魅力に、若い人ももっと気付くといいなぁと思います。
「社会人になってからできない理由は山ほどある。でもそういうことを言い訳にしたくない。自分に甘えないことが大事」と言う平井さんのストイックな姿勢は、空手によって育まれたそうです。平井さんも内山さんも、団体戦で全国大会での優勝経験があるというのは素晴らしいですね。

●DATA●

企業名 有限会社 木工房ひらい
住所 上市町正印526-1
電話番号 076-473-0864
FAX番号 076-461-7568
E-mail koubo-h@wmail.plala.or.jp
設立年月日 創業 昭和初期(平井建具製作所)
設立 平成4年(有限会社 木工房ひらい)
代表取締役 平井憲明
事業内容 木製建具・家具・襖・障子・アルミ製品(玄関サッシ・ルーバー)・ガラス戸
主な実績 水橋中部小学校・古沢小学校・南部中学校への木製建具(ドア・引き戸)の制作・取り付け
資本金 300万円
勤務時間 8:00~17:30
休日 隔週土曜、日曜、祝日、年間105日、その他有給休暇など(GW、年末年始、お盆)
ホームページ なし
Facebookページ なし
過去3年間の売上高 右肩上がり
過去3年間の採用実績 平成23年0人/平成24年0人/平成25年1人
福利厚生 / 従業員特典 保険(健康、雇用)、厚生年金、資格支援、従業員割引あり

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