上市町ではたらく

ライフスタイルに応じた柔軟な暮らしを提案

水野建築研究所

設計と工事中の現場監理にとどまらず、木材の仕入れ・買い付けから施主さん家族と一緒に床のワックスがけ、外壁を塗る作業なども行う設計事務所。住まい手のニーズを考えて新築やリノベーション、増築などを行っている。雪の降る北陸でも個性に合った素敵な家を持つことができることを、自宅兼事務所の設計で実現し、各方面から高い評価を得ている。富山県内の建築家ネットワーク「AnT(アント)」にも所属。かみいち総合病院のそばにあり、ひときわ目を引く建物が事務所。

水野 敦さん(49)

水野 敦さん(49)

 
 

大阪の超高層ビルの設計を経て富山へUターン

かみいち総合病院そばの水野建築研究所

かみいち総合病院そばの水野建築研究所

――創業の経緯を教えてもらえますか?
おじが大工さんで、小学6年生のときに実家の増築をしてくれたのを見て空間づくりに興味が湧いたのが最初のきっかけです。富山中部高校卒業後、富山大学の工学部に進学しましたが、建築の勉強をしたいと思い、福井大学に入り直しました。4年生から大学院2年まで、計3年間はゼミで設計の基礎を学びました。その後、大阪の300人ほどの社員がいる設計事務所で働き、公共工事などに携わりました。就職難の時代でしたが卒業後は事務所に入れ、理解ある上司にもかわいがってもらえました。今思うと生意気な新入社員だったけど、いろいろな仕事をやらせてもらえ、充実していました。ゆくゆくは自分で設計事務所を開きたいと思っていたこともあり、長女が生まれるのを機に平成14年1月に上市町に戻って起業しました。水野建築研究所の社長は同じく一級建築士の妻で、私は共宰で管理建築士という立場で仕事をしています。
――大阪ではどんな建物の設計をされていたんですか?
大阪府北区中之島にある合同庁舎などの超高層ビルや、小学校の校舎建て替えなどの大きなものです。設計だけでなく、インテリアのデザインなどもしていました。

自宅兼事務所の打ち合わせスペース

自宅兼事務所の打ち合わせスペース

――地元で設計事務所を開く決意をされたきっかけは?
平成7年に起きた阪神淡路大震災が落ち着いたころ、震災で倒れたマンションの建て替えに携わったことがきっかけの1つです。このプロジェクトでは新しい暮らしに向かう人、諦めざるをえなかった人、いろんな人を見ました。その頃、妻の事務所が行っていた「木造住宅の安全性について考える勉強会」に私も行くようになり、丈夫で長持ちする家を作りたいと考え始めました。そんな時、かみいち総合病院の建て替えがあり、生まれた家がなくなるということになりました。元の家はラーメン都の向かいにありましたが、3軒隣のこの場所への移転することになりました。ちょうど長女が生まれる時期で、子どもを育てる環境や自分の生活環境について考えたことや、両親も高齢になってきましたし、いざという時にそばにいられるようにという思いもあり、上市町に戻る決意をしました。都会は情報が自然と入ってきて便利でしたが、インターネットの普及によって都会でなくとも情報を得られるようになり、離れる決心ができました。大きな建物もいいですが、もっとユーザーの顔が見えるところで設計したい、自分らしさを出したいという思いもありました。住宅だったら使っている人との距離が近いですからね。木造住宅に関する勉強会で学んだことを地域に還元したいです。

ライフスタイルに合わせてモデルチェンジできる家

2013年富山県建築賞受賞の「多角形の家」

2013年富山県建築賞受賞の「多角形の家」

――ホームページにはご自宅兼事務所も掲載されているんですよね。
はい、ホームページの「白い家」が自宅兼事務所で、1階は事務所と車庫で、その2階に住んでいます。住居部分は24坪しかありませんが、ロフトがあるので家族4人で工夫しながら住んでいます。奥の「黒い家」には両親が住んでいます。私たちが富山で吹き抜けのある家を作ったのは、寒さにも強い開放的な空間を作れること、北陸でも建て主さんの個性に合った素敵な家を持つことができ、富山の人にもいろんな可能性があることを知ってもらいたかったからです。構造的にしっかりしていて基本性能の高いものを、ハウスメーカーさんと変わらない値段で提供できたらと考えています。住宅を紹介する全国誌でも紹介され、県外からも設計のお声がけをいただけ、ありがたいです。ほかにも、手がけたプロジェクトは地名や特徴から名前を付け、ホームページに掲載しています。

――「9°の家」や「おどりばの家」など、興味深い家がたくさんありますね。水野さんが設計される上で、大切にされているのはどんなことですか?

家づくりへの思いが伝わるブログ

家づくりへの思いが伝わるブログ

家は使いやすいようにモデルチェンジできたらいいと考えています。家族構成、年齢、ライフスタイルによって家のあり方は変化します。リフォームするとお金もかかるので、柔軟に対応できるような家を提案しています。例えば、子ども部屋は最初は広く作り、後で間仕切り壁を作ったり、家具や布で仕切ったりできます。子どもが成長して巣立った後は、また広い部屋に戻すことができるんです。その方が工夫次第で楽しく生活できると思います。個人主義の半面、個室に慣れ、うるさい場所では集中できないお子さんも増えているので、そうならないよう人間らしい環境・空間で過ごしてもらいたいと思っています。

――そう言われれば、リビングで勉強する子の学力が高いと聞いたことがあります。
そういった考え方や情報もブログで発信しています。読んで共感を得てくれた方が事務所に相談にお越しになるので、インターネットに助けられています。

家づくりの技術を伝授

わざと雨ざらしにして観察している素材

わざと雨ざらしにして観察している素材

――「水野建築研究所」という名前はどうやって決められたんですか?
知人から誰の会社か顔が見えた方が良いとアドバイスされたので「水野」を入れ、素材や間取りの作り方など構造をいろいろ考えていこうと「研究所」をプラスしました。実際、塗料や素材をお客さんに安心して提供できるものかどうかをチェックするため、わざと外で雨ざらしにして経過を観察するなど、あれこれ実験しています。うちで使っている材料や部屋の組み立て方は特殊なものではありません。一軒一軒の個性が出てくるのは、住まい手の方と話をすることで生まれてくるものなのです。一般的に、設計事務所というと図面を描き、工事中の現場監理をする仕事なのですが、私たちは木材が製材されるから監理を行っています。住まい手家族にも家づくりに積極的に参加してもらっていて、一緒に床のワックスがけや外壁を塗る作業を行うほか、左官工事(漆喰塗り)を楽しんでいただきます。「大変だけど一生に一度あるかないかのことなので、楽しみましょうよ」と話し、私もお手伝いするのを楽しんでいます。これらの作業はいずれメンテナンスをする際に役立つことですし、家づくりを通して家族の絆が強くなります。
――家に対する思いも深くなりそうですね。

切磋琢磨してより良い住まいを作り続ける

事務所前に咲いていた花

事務所前に咲いていた花

――Uターンされてから、上市町での生活面はいかがですか?
町なかに住んでいるのもありますが、日常生活で必要なものは徒歩か自転車で買いに行けるので、不便だと思ったことはありません。地元の人はよく「何もない」と言いますが、「何もないことの良さ」というのがあって、都会と違うことの素晴らしさは外から見た目線でないと気付きにくいのかもしれませんね。すべてが便利というのには懐疑的で、当たり前だと思っていることが実は当たり前じゃなかったりします。家も、「エアコン1台で過ごせる」というのは管理された病院の中と一緒じゃないかと。地震や台風、雨でつぶれず、安全にしのげる、それで十分じゃないのかなと思っています。華美なものを使うわけでなく、逆に安っぽいものを使うのでもなく、バランス感覚を持って仕事をしたいと考えています。
――県内の建築家同士のつながりも持っていらっしゃるんですよね。
はい、自分1人では得られる情報に限りがあることから、情報交換の場として「AnT(富山の住まいづくりを考える建築家ネットワーク)」を始めました。設計の方や職人さん、学生さんが勉強に来られることもあります。お互いの作品を発表し合い、刺激を受けながら、今後もより良い住まいを作り続けたいと考えています。

水野さん(左)とスタッフの山内さん

水野さん(左)とスタッフの山内さん

――若手のスタッフを育てることについてどうお考えですか?
現在、私と妻のほかにスタッフが2人います。私もそうですが、うちの奥さんもアトリエ事務所で先生に鍛えられてきました。だから若手の技術者を育てたいという思いが強い。住宅に興味を持つのは女性の方が多いです。将来助け合ったりライバルになったりするのもいいですね。サポートできるのは、技術者としていずれうちを卒業できる見込みのある人、独り立ちする意思のある人じゃないとダメです。責任感を持って仕事をしていってほしいです。
――最後に、今後の展望を教えてください。
年々、断熱材など構造がバージョンアップしています。私は奇抜なものや公共工事などの大きなものを作るより、住まい手の方のニーズを考えてどう作るかを大切にして行こうと考えています。この4~5年の間に、住まいの機能や空間そのものを見直すリノベーションが増えてきています。間取りを直したり、耐震改修をしたりするために床下に入って調査し図面を描くところから始め、ライフスタイルに合わせて住みやすく作っていきます。新築よりさらに手間はかかりますが、現状の「住まい方調査」、つまり打ち合わせを重ねて生活を知ることで、より良いものが出来上がります。家具なども生活のパーツとして設計し、岐阜県飛騨市の家具職人さんに作ってもらっています。今後も個性的な住まい手さんと出会って行きたいですね。
――水野さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。

若手社員からの声

山内朱璃さん

山内朱璃さん

平成27年4月に入社した山内朱璃さん(23)は、福岡県出身。石川県の金沢美術工芸大学卒業後、縁あって水野建築研究所に入りました。 「設計の手伝いや、CADのデータの直しを担当しています。水野さんの設計は、住まいのことをよく考え、写真を見るだけで暮らしぶりがわかります。私もこういう建築をやりたいと思っています。自分の足りないところを考えられるような教え方をしてくださるので、ためになります」と話してくれました。

水野建築研究所のHP「works」より

水野建築研究所のHP「works」より

水野さんの手からエサを食べるモカちゃん

水野さんの手からエサを食べるモカちゃん

取材中、着信のあった水野さんの携帯電話のメロディが「ピタゴラスイッチ」のテーマ曲でした。綿密に計算された上で遊び心のある「ピタゴラ装置」が思い浮かび、すごくピッタリだなと思いました。
私の祖父は大工さんだったので、私も家の写真や図面を見るのが好きです。水野建築研究所のホームページの「works」には「9゚の家」や「おどり場の家」、「多角形の家」などの興味深い家がたくさん掲載されています。自分で建てる予定がなくても、見るとワクワクしますよ。
事務所には水野建築研究所のアイドル、うさぎのモカちゃんがいて、癒されます。モカちゃんは平成27年4月生まれ。ホームページにもさりげなく登場しているので、探してみてくださいね(ヒント:土間のある暮らし)。

●DATA●

企業名 水野建築研究所
住所 上市町大坪43-1-2
電話番号 076-473-0345
FAX番号 076-473-0345
E-mail mail@miz-arch.net
設立年月日 平成14年1月
代表者氏名 水野桂子
事業内容 自然素材の住まいを設計
構造材に国産の杉を使用、在来型工法による新しい住まいづくり
ライフスタイルや家族の成長などの変化に対応する空間の提案
主な実績 2003年・2004年・2013年富山県建築賞2013年
「愛宕町の家」が雑誌「すみたく本2015」に掲載
勤務時間 9:00~18:00
休日 週休二日制、土曜・日曜(祝日がある場合は出勤し、振替)
ホームページ

http://www.miz-arch.net/index.html

Facebookページ なし
従業員数 4人
過去3年間の売上高 それなりに忙しくさせてもらっています
過去3年間の採用実績 平成27年 1人
福利厚生 / 従業員特典 雇用保険、資格支援など

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