上市町ではたらく

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町なかの空き家を再生した家庭的な施設

特定非営利活動法人 かみいち福祉の里

富山型デイサービスに知的障害者グループホーム、ショートステイを併設した「お茶の間」と、認知症対応型のグループホームの2つの施設を整備し、地域の高齢者が安心して過ごせる場所を提供しているNPO法人。町なかの民家を改装しているため、家庭と同じような雰囲気でリラックスして過ごすことができる。理事長の奥井健一さんは、「利用者の方の思いに寄り添い、安心して過ごしてもらっています。職員が外部研修で学んだ知識・技術をほかの職員に伝達し、共有を図り、利用者さんに対応することが大切です」と話す。

理事長 奥井 健一さん(73)

理事長 奥井 健一さん(73)

 
 

家庭と同じような雰囲気の施設

民家を改装した「お茶の間」

民家を改装した「お茶の間」

――設立の経緯を教えてもらえますか?
「かみいち福祉の里」は、一人暮らしの高齢者らの「地域で安心して暮らしたい」という要望を受け、平成17年にNPOを発足させました。まず、平成18年に上市町東江上で認知症対応型のグループホームの事業を新設いたしました。さらに平成20年に上市町若杉新の民家の空き家を活用して、デイサービス「お茶の間」と知的障害者グループホームを開設、翌21年にはショートステイも併設いたしました。また、平成25年には、富山県内で初の「仮認定NPO法人(一定の税制優遇措置を受けられる制度)」として認定を受けています。

移動距離が短く、利用者の方が自分で動きやすい廊下

移動距離が短く、利用者の方が自分で動きやすい廊下

――民家を改装されているため、とてもアットホームな雰囲気ですよね。
はい。できるだけ一般家庭と同じような雰囲気を作りたいと考え、町なかの空き民家を購入して福祉事業へ蘇らせました。施設らしくない施設にしようと、「お茶の間」と命名したんです。一人ひとりの状況に見合った日常生活介護に努め、利用者さんが集うことで孤立・疎外感の軽減と、ご家族の方の心身のご負担を軽減します。
――どんな方々が利用できますか。
介護度には「要支援1、2」と「介護度1~5」の7段階があるのですが、それによって介護保険のサービス量の上限が決まっています。「かみいち福祉の里」には要支援1、2と介護度1~4の方がおられます。介護度4になると自分一人ではほとんど動くことができなくなっている状態なので、お風呂に入るのも困難です。そのため、特に求められるのは自宅での介助が難しい「入浴」を要望されます。

小学生から高齢者までが集う場

小学生から高齢者までが集う場

――そうなんですね。利用者の方はどのように過ごされるんですか。
「お茶の間」の富山型デイサービスでは、お年寄りから子どもまでが一緒に生活をする通所介護で、健康チェックや食事、入浴、趣味活動などを行います。また、支援学級に通う小・中学生の放課後デイも行っています。知的障害者グループホームには、県内各地から4人の方が入居し、共同生活を送っています。日中は近隣の仕事場へ通勤し、就労しています。就労は賃金を得るだけでなく、生きがいになる大切なものです。
――デイサービスと入居だと、選ぶ基準は何でしょう?
ご家族で、ある程度面倒を見られるのであれば、入居型より自己負担の少ないデイサービスが1番いいと思います。私の父も、60歳で脊髄を損傷して歩けなくなりましたが、当時このような施設がないため家での介護となり大変でした。
――家族に要介護者がおられると、このような施設が必要ですよね。
そうですね。昔はこんなにお世話する体制が整っていなかったです。今はこういう場所があるので、介護されるご家族の負担軽減のためにもいいですね。

喜ばれることが原動力

利用状況を伝える「お茶の間だより」

利用状況を伝える「お茶の間だより」

――大変なのはどんなことですか?
利用者さんで帰宅願望の強い方が、すぐに施設を出て行こうとされてしまうことです。そんなときは何とか話を聴きながらここにいてもらいます。また、認知症の方で消しゴムやクレヨン、金属など何でも食べ物と勘違いされ、口に入れてしまうことがあるので、そういう方はつきっきりで見ています。一人ひとりの状態が違うと、介護の仕方も違います。こちらが一生懸命にしているつもりでも、利用者さんから見るとなかなか思い通りにならないこともあるようです。言葉で伝えきれない利用者さんは職員に手を出されることもあるので、そういう時は特に大変ですが、できる限り利用者さんの気持ちに寄り添い、自由に過ごしていただけるようにしています。
――そんな中、仕事を頑張る原動力というのは?
みんな、利用者さん本人やご家族の方から喜ばれることが力になっています。「ご本人や家族の方の思いを叶えてあげたい」そういう思いでやっています。
――そうなんですね。今も、求人はされているんですか?
はい。
――どんな方に働いてもらいたいですか?
周りがよく見えている人、自分がいま何をしなければならないかを考えてとっさに動ける人です。実際、かみいち福祉の里には、よくやってくれている人がいます。指示を受けなくても人の先へ先へと動ける人。そういう人は利用者さんにも、ほかの職員にもみんなから好かれます。
――資格の有無はいかがですか?
資格を持っていなくても、働きながら取得することが可能です。本人の意思はありますが、私としてはどんどん取ってもらいたいです。看護師、介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格があれば、介護の質も上がり、介護報酬も上げることができるんです。

「省エネ」で仕事を効率よく進める

笑顔の素敵な職員のみなさん

笑顔の素敵な職員のみなさん

――奥井さんはいつから理事長になられたんですか?
平成19年に理事に、平成20年から理事長になりました。私は素人ですが、職員のみんながよくやってくれているので助かっています。福祉の世界は研修がたくさんあり、それぞれいろんなことを教わってきます。ここでは外部で学んできた職員が、ほかの職員に伝えるための「伝達講習」というものを行っているんです。私たちもそれを聞きながら、互いにどうやっていけばいいか考えています。知識は教わるだけじゃダメで、他の人に伝えることで本人も身につくんです。
――なるほど。インプットとアウトプットですね。
はい。いつも言っているのは、「みなさんに伝えるということが大事」ということ。コミュニケーションをできるだけ密にした方がいいということも伝えています。それが実行されているので、頼もしいです。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
平成29年4月から介護システムが変わり、要支援1と2は介護保険サービスに制限を受けることが定められました。その方たちは、町や地域の方々から、主としてご支援を受けることになります。 一方、平成27年4月には介護報酬が引き下げられました。しかし、職員の給料を下げるわけにいかないので、経営の中で「省エネ」をするなどして現状を維持するよう頑張らなければいけません。「省エネ」というのは、仕事を効率良く進めることで、同じエネルギーでもたくさんのことができるということです。儲からなくてもいいですが、職員の給料は少しでもベースアップが見込めるようになればいいと思っています。高齢化が進み、国の予算が限られている中で医療・介護に対する配分は厳しくなっていますが、多くの人にもっと福祉の必要性を知っていただければ、もっと理解を深めてもらえるのではないかと思っています。私たちは、現状を維持し、永く続けていくことを大切にしようと考えています。
――わかりました。奥井さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。

若手職員からの声

吉岡美智子さん(左)と立花かおりさん

吉岡美智子さん(左)と立花かおりさん

看護師として働き、3年目の吉岡美智子さんは、「福祉の場は病院と全然違います。ここはアットホームな雰囲気で、季節を感じるイベントを大事にしながらくつろげる空間づくりを心がけています。私はその中で、医療の必要な方の対応など、みなさまが健康で活き活きと自分らしく過ごせるように、健康管理を行っています」と話してくれました。
また、生活相談員の立花かおりさんは、4年目。「初めてここに来られるときの面接や説明などを担当しています。窓口となるところなので、常に笑顔を心がけています。本人の思いを聴き、その方のペースに合わせて過ごしていただくのが、他のところと違う点だと思います。レクリエーションもありますが、無理に参加しなくてもいいですし、お話ししたりテレビを見たり横になったり、自由に過ごしていただけます。利用者様の思いに寄り添い、明るく楽しく安心して過ごしていただけるように心がけています」とのことでした。

嶌田涼さん

嶌田涼さん

3年目の介護職員の嶌田(しまだ)涼さん(24)は、「介護の仕事は気付きの仕事。利用者の方に喜んでいただけるよう、今何をして欲しいのかなどを気付けるよう心がけています。働いていて、この仕事が自分に合っていると思います。毎日の仕事はもちろん、今は介護福祉士の資格を取得しようと頑張っています」と話してくれました。

はたらくらすコネクション記者・古野知晴のFuruno's voice!
玄関の手作り装飾

玄関の手作り装飾

「お茶の間」に入ってすぐ、まさに「家」のような雰囲気に驚きました。木がふんだんに使われていて、玄関や壁の装飾は季節が感じられる温かいものでした。
また、放課後デイ(学童保育)の小学生からおじいちゃん・おばあちゃんまで幅広い年代の方が同じ空間で過ごす「富山型デイサービス」の良さがとても感じられました。
奥井理事長は、前職の富山大学工学部教授時代に研究室の学生さん達と一緒に登山に行かれたこともあり、剱岳にも登られたそうです。水や空気、煙などの流体から地球温暖化や「省エネ」について研究する学科を担当されていたとのことで、「節エネ(無駄なエネルギーを使わないこと。少しぐらい暗くても照明を消すなど)」と「省エネ(同じエネルギーを使ってたくさん仕事をすること。効率のアップ)」の違いについて教えてもらえました。
「省エネ」の考え方はどんな仕事にも当てはまるのではないでしょうか。生産性の向上ややりがいアップにつなげたいと思いました。

●DATA●

施設名 特定非営利活動法人 かみいち福祉の里
住所 お茶の間/上市町若杉三丁目418
法人事務所・認知症対応型グループホーム/上市町東江上288
電話番号 お茶の間/076-473-3383
法人事務所・認知症対応型グループホーム/076-473-3313
FAX番号 お茶の間/076-473-3393
法人事務所・認知症対応型グループホーム/076-473-2941
E-mail fukushinosato@kami1294.com
設立年月日 ・NPO設立/平成17年8月8日
・認知症対応型グループホーム 事業開始/平成18年8月1日
・デイサービス・知的障害者グループホーム 事業開始/平成20年5月1日
・ショートステイ 事業開始/平成21年2月1日
理事長 奥井健一
事業内容 【お茶の間】
・富山型デイサービス…お年寄りから子どもまでの日帰り通所介護。支援学級に通う小・中学生の放課後デイも行っている。健康チェック、食事、入浴、趣味活動あり。定員15名。12月31日~1月3日休み
・知的障害者グループホーム…富山県内各地から入居。日中は近隣の仕事場へ通勤、就労。定員4名。年中無休
・ショートステイ…ご家族の仕事や介護疲れの解消のための短期間の宿泊。年中無休で介護サービスを行う。定員6名
【グループホームかみいち福祉の里】
・認知症対応型のグループホーム。定員18名。年中無休
勤務時間 基本8:30~17:30(早出・遅出あり)
夜勤17:45~翌9:45/17:15~翌9:15
知的障害者グループホームは6:00~8:00と16:00~20:30(6時間勤務)
休日 月9日間、年間108日、その他有給休暇など
ホームページ http://www.kami1294.com/
Facebookページ なし
従業員数 51名(パート21名を含む)
過去3年間の採用実績 平成25年8人、平成26年7人、平成27年3人
福利厚生・従業員特典・設備 保険(健康、雇用)、厚生年金、資格支援(研修、受験料補助)、
職務手当あり、介護・子育て支援、冠婚葬祭祝い金あり、
食事補助あり、年に1度親睦会

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