移住者の声

~昔から惹かれていた富山でおわらとの出会い~愛知県から移住

山田典幸さん

愛知県出身で、学生時代から富山にはひとかたならぬ縁を感じていた山田典幸(のりゆき)さん。上市町出身の奥様との結婚を機に、上市町へ移住。2年前に一旦愛知県へ戻ったものの、おわらの魅力が忘れられず、再び富山県へ。立山のホテルやスキー場など富山ならではの仕事を見つけ、自然を感じながらの生活を楽しんでいる。

山田 典幸さん(56)

山田 典幸さん(56)

 
 

富山が好きな要因の1つがおわら

――上市町に来られた経緯を教えてもらえますか?
 愛知県出身で、大学時代に上市町出身の妻と出会いました。卒業後、私は愛知県で自転車販売の仕事に就き、妻は富山へ戻ってピアノ教室を開いたのでしばらく遠距離恋愛をしていました。32年前、24歳の時に結婚を前提に富山へ来たんです。親父と兄には反対されましたが、次男だし気楽な考えで2か月後には結婚しました。ちょうど昭和59年の豪雪の年で、雪山に夕日が反射するとすごく綺麗で、「これが富山か」と強く印象に残っています。最近は雪が少なくて寂しいですね。
――富山に来られることに不安とかはなかったですか?
 いいえ、それ以前から富山には結構縁があったんですよ。高1の時学校で立山登山に来たり、1人で自転車で能登半島を一周し、夜行電車で富山駅に来て岩瀬のユースホステルで一泊したり、富山出身の大学の友達と富山地方鉄道の射水線(昭和55年に廃止)に乗りに来たこともあるんです。

――それは縁がありますね。富山に来られてからはどんなお仕事を?
 大手菓子メーカーに勤め、配送や製造、店舗管理、レジ、包装など一通りのことをしました。すごく忙しく、盆や正月もないような生活でした。私はずっと喫茶店をやりたいと思っていたので、イートインのコーナーで厨房に入ってパスタ、ドリア、サンドイッチなどを作って提供していたこともありました。平成26年に親の介護のため愛知県に一旦戻り、アルバイトなどをしながら友人が経営する飲食店の立ち上げに関わって仕事をしていました。

鏡町のおわら(山田さん撮影)

鏡町のおわら(山田さん撮影)

―― 一旦愛知県に戻られてから、今はまた富山に来られたんですね。
 はい、平成27年8月末で友人の店を辞め、富山へ来ました。愛知県は車も使わなくていいですし、何でもあって便利ですが、やっぱり朝起きたら山が見える生活がいいと思って。それに、どうしても富山市八尾町の「おわら」が見たくて富山へ帰ろうと思いました。

――おわらがお好きなんですか?

山田さんが刺繍したおわら用ベスト

山田さんが刺繍したおわら用ベスト

 そうです。富山が好きな要因の1つがおわらです。20数年前に前職で知り合った人に連れて行ってもらってから、最高の楽しみになりました。おわらを通して、人と交流するのが好きです。おわらの踊り手や唄い手、伴奏の方、風景を写真に撮るのですが、それを印刷して写っている人にあげ、喜んでもらうのが嬉しいです。特に鏡町(かがみまち)が好きでいつも行き、自分で鏡町の浴衣と同じ模様を刺繍したベストを着て写真を撮影しています。八尾町は富山県の中でも特に伝統がある分、排他的なところがあって、仲良くなるのに5年かかりました。「郷に入っては郷に従え」と言いますが、その土地のルールを守って付き合ううちに、少しずつ仲良くなっていったんです。上市町も似たところがあって、仲良くなってしまえばめちゃくちゃ仲良くなれますよ。

白竜橋から見る剱岳(山田さん撮影)

白竜橋から見る剱岳(山田さん撮影)

――それだけ八尾に精通していらっしゃると、そこに住みたいと思われなかったですか?
 考えたこともありますよ。でも、おわらは毎年9月1日~3日の時期に行って見るからいいのかなと思います。住むには上市町がいいです。
――上市町のどんなところが好きですか?

 何と言っても剱岳です。上市町から見る剱が1番綺麗ですね。

冬期期間のみくりが池(山田さん撮影)

4月上旬のみくりが池(山田さん撮影)

どこから見ても剱が見える。山が全体的に見える中でも、剱岳が真ん中に見えます。自宅の3階からも見えますが、白竜橋から見る剱岳が何とも言えず美しいです。室堂からは「大窓」「小窓」「三の窓」は見えないんですよ。「スーパー農道」もありますし、高速道路を通って上市町から東西どこでも行けます。2時間もあれば山から海まで、標高2,450mの立山室堂、氷見市にも。こういう環境のところはほかにないと思います。

富山の特徴を活かした生き方

立山に棲むライチョウ(山田さん撮影)

立山に棲むライチョウ(山田さん撮影)

――富山に戻って来られてからお仕事はどうされているんですか?
 もっと富山のことを知りたいと思っていたところに、新聞で立山室堂にあるホテル立山のレストランの求人を見つけ、平成27年10月から就職しました。世界でも指折りの標高の高いところにあるホテルです。秋には昼食に1日2,500人の観光客が訪れます。日勤でバスで通っていると、毎日移り変わる景色を見ることができる仕事で嬉しいなと思います。11月末から3月は山が閉鎖されるので、12月はかまぼこ屋、冬場は立山山麓のスキー場で働き、富山ならではの仕事、富山ならではの生き方ができています。それぞれの仕事で輪が広がり、いろんな知識を得られました。

雨晴海岸から望む海越しの立山連峰(山田さん撮影)

雨晴海岸から望む海越しの立山連峰(山田さん撮影)

仕事と仕事の間に1週間くらい休みがあるので、愛知県へ行ったり友達を連れてきて雨晴海岸から見る海越しの立山連峰を見せてあげたりしています。今年は3月中旬に富山県側からは雪が積もっていけないため、長野県大町側から立山に上がり、1週間に5日間泊まり込みでレストランの仕事とバーの仕事をしています。

――バーテンダーもされているんですか。多彩ですね。
 「なんちゃってバーテンダー」です(笑)。

大岩山日石寺の十二支滝(山田さん撮影)

大岩山日石寺の十二支滝(山田さん撮影)

休みが合えば、山で知り合った仲間を上市町の大岩や「眼目山立山寺(さっかのてら)」、「城山の湧水」へ連れて行ってあげることもあります。「城山の湧水」は超軟水で、減菌装置もついているのでおすすめです。最近、山から下りるたびに行っているのは、焼き鳥の有名な居酒屋「やぐら松」。人を連れて行くのは、ラーメン好きには「都」、グルメな人には「華生」です。今の仕事のスタイルになってから上市町のいろんなところに行けるようになり、より魅力が分かるようになりました。今までの仕事や生き方を自然の流れに任せてきましたが、無駄なことは1つもなかった。いろんなことが本当に今のためにあったと思います。

城山の湧水(山田さん撮影)

城山の湧水(山田さん撮影)

――富山の魅力、上市町の魅力ってどんなところでしょう。
 ずっと富山で生まれ育った人は「遊ぶところがない」と言うけれど、1度県外へ出てから戻ってくると、富山の魅力がよく分かると思います。私の周りにもIターンの人が多いのですが、「子どもを育てるにはどこがいいか」、プラス「仕事ができるところ」と考えたとき、みんな富山がいいと言いますよ。上市町は鳥や虫の声など自然の音が聞こえてきて、ツバメの飛ぶ姿が見られるところも魅力の1つです。上市駅はスイッチバック(折り返し形)なので鉄道好きな人にはたまらないですし、山が好きな県外の人にとっては馬場島が有名です。馬場島が、もっと釣りファンが楽しめるよう有料エリアでもいいので整備されれば嬉しいです。そうすれば観光客に上市町に泊まってお金を落としてもらえるようになりますし、そんな仕組みができたらいいなと思います。

立山から見る星空(山田さん撮影)

立山から見る星空(山田さん撮影)

――そう考えると、上市町の観光はまだまだ広がる可能性がありますね。
 はい。上市町の人は当たり前すぎてタダだと思っていても、県外の人はお金を出してでも見たいものがあるんです。1番売り出すべきものは、上市町のロケーション。街の灯りも少ないので、流星群も見えます。他府県の人は知らないから来ないだけであって、魅力的な資源はたくさんありますよ。剱岳や自然の音、流星群など、全部が癒し、パワースポットとかヒーリングスポットと言えますし、仕事も自然を感じながらすることができるんです。魚津水族館の年間パスポートが大人2,060円、ファミリーパークや天文台、科学博物館など富山市の施設の年間共通パスポートが1,500円と、観光会社を通さなくてもいろんなものが安いのも魅力だと思います。

――何度も行く人にはとってもお得ですね! では最後に、山田さんが今後挑戦したいことを教えてもらえますか。
 夢はあります。富山で、できれば上市町で喫茶店を出したい。やるなら「コミュニティ&カルチャールーム  クロポッケ」みたいに、訪れた人とコミュニケーションのとれる店にしたいですね。これからも、富山に根差した暮らしをしていきたいです。

――わかりました。山田さん、今日はどうもありがとうございました。
 こちらこそありがとうございました。

春から秋の観光シーズンは立山のホテル、冬はスキー場など、富山の中でも富山らしい仕事をされている山田さん。富山県民以上に富山を愛し、県外の友人にPRされている様子が伝わってきました。山田さんが撮影されたおわらや富山の風景の写真はどれもとても綺麗で、特に立山の夜景や冬の立山はなかなか見ることができないので貴重でした。「上市町全部がパワースポット、ヒーリングスポット」だという言葉に、大いに納得です。私も、県外の人にも県内の人にも、上市町の魅力をもっともっと伝えたいなぁと思いました。


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