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~自然を感じ豊かな感性で働く~
福岡県から就職で富山県へ
山内朱璃さん
福岡県北九州地区築上郡(ちくじょうぐん)出身の山内朱璃(あかり)さん(23)。石川県の金沢美術工芸大学を卒業後、縁あって上市町の水野建築研究所を紹介してもらい、就職。平成27年3月に上市町へ。田んぼのカエルの声や上市駅にあるツバメの巣など、自然の中で生活する上市町の暮らしを感じ、ジョギングや自転車通勤を楽しんでいる。
遠くても、働く価値がある職場
――九州からなぜ富山県に?
石川県の金沢美術工芸大学を卒業後、大学の助教授が、以前、水野建築研究所で働いていたスタッフの知人だったことから、紹介してもらい、就職が決まりました。平成27年3月に上市町に引っ越し、4月から働いています。地元までは、富山駅から3回乗り換えて特急サンダーバードと新幹線で7時間、上市からだとプラス30分かかります。
――実家から学生時代よりもさらに遠くなることで、不安はなかったですか?
確かに遠くなるので、親からは「何でそこなの?」と言われました。でも、「遠くなるけど勉強させてもらえる。それだけの価値がある」と思い、親を説得しました。水野さんの設計は、住まいのことがよく考えられていて、写真を見るだけで暮らしぶりが分かります。私も「こういう建築がやりたいな」と思いました。今は設計の手伝いや、CADのデータの直しなどをしています。自分の足りないところを考えられるような教え方をしてくださるので、とてもためになります。
電話越しに聞こえるカエルの声やツバメの飛ぶ駅
――上市町の印象はどうですか?
のどかですね。私の地元もこんな感じなので、親近感があります。上市町は立山連峰が綺麗なのが特に印象的です。生活する分にはスーパーもあるし、服とかは電車で富山市へ行って買えます。上市町に戻ってきて静かなところで暮らす、という生活は充実しているなと思います。石川県では大通り沿いに住んでいたのですが、こっちでは田んぼの中のアパートなので、5月頃から、3種類ぐらいの違うカエルの鳴き声が聞こえてきます。
――3種類のカエルの鳴き声を聞き分けられるのがすごいですね(笑)。確かに大合唱ですもんね。
はい。以前、窓を開けて県外の友達と電話をしていたら「カエルうるさいよ」と言われました(笑)。8月になってからは虫の声がし始めて、季節が移ろいでいるのを感じます。この後、コオロギやスズムシが出るのが楽しみです。こういうのが風物詩になればいいと思います。上市駅にはツバメの巣がいくつもありますが、上市町の人達はツバメを邪険にせず、苦情も言わないんです。人柄が良く、そんな人々が暮らしているから町の雰囲気がいいんだと思いました。
――そういった生き物の声に気付かれるのが素敵ですね。地方暮らしを楽しまれているのが伝わってきます。
スーパーで販売される地元の野菜や風物に驚き
――富山の「食」はいかがですか?
ホタルイカや氷見市のブリは格別だなと感じました。日本海側のお魚は臭みがなく新鮮です。ホタルイカせんべいも美味しかったので、お土産に買いました。よく「上市ショッピングタウン パル」とかで買い物をするんですが、地元の方が出されているモロヘイヤなどの野菜が安くて美味しいです。特にナスが大きくて安いのに驚きました。あと、食材ではありませんが、パルやマックスバリュに売っていて「何だろう」と思ったのが、「おしょうらい棒」。お盆に火をつけて回すらしいですね。地元にはないのでびっくりしました(笑)。
――おしょうらい棒、やっぱり珍しいものですよね。毎年8月13日に上市町の花火があるのですが、その日に先祖の霊を迎える伝統行事として行われます。
見てみたいけど、実家に帰省するんですよ。残念です…。そう言えば、川辺をジョギングするのが好きなんですが、上市川の河川敷にやぐらが組んであるのを見ました。
――「ニオトンボ」ですね。上市川沿いにいくつも設置されるので、迫力ありますね。ジョギングはよくされるんですか?
はい。上市町はどこへ行っても空気が綺麗なので、ジョギングしていて気持ちいいんです。5分歩いて15分走る、というのをできる日に続けています。職場まで自転車通勤しているので、自転車にもよく乗ります。富山市まで乗って行ったこともあります。
――えっ、富山市まで! どのくらい時間がかかりましたか?
50分くらいです。神通川が綺麗でした。富山地方鉄道は、土・日・祝日は自転車の持ち込みができるので、もし疲れたら電車で帰って来ることもできるんです。一度、新潟県まで自転車で行き、帰りは黒部市から電車に乗って帰ってきたことがあります。
――そんなこともできるんですね! それにしても新潟県までってすごい…。
スローライフの中でアグレッシブに行動
――これから上市町でしたいことは何ですか?
上市町巡りです! 自転車を走らせたい。坂道の斜度がきつくなければ、ですが(笑)。もっと上市町を知り尽くして、誰か友達が来た時に教えたいんです。あと、映画監督の細田守さんが好きなので、「おおかみこどもの雨と雪」の「花の家」に行きたいんですよ。面接で初めて上市町に来た時、上市駅で旗を見て「おやっ」と思いました。「バケモノの子」も昨日観に行ってきたところです。
――車が無くても大丈夫ですか。
今の季節はいいんですが、冬に向けて中古車をそろそろ買いたいなと思っています。平成28年度は2年目になるので現場にも行く機会ができます。その時に1人で行けるようにならないといけないですし。仕事柄、古い建物にも新しい建物にも興味があるので、町の空き家なども中に入って見てみたいです。
――最後に、上市町への移住を考えておられる方へメッセージをお願いします。
私の地元は海が多かったですが、上市町は山も海も結構近いので、どっちでも行けてお得です。スーパーでも地元のものを買えるので新鮮です。スローライフができるので、自然の中で暮らすことにあこがれている人にはもってこいだと思います。地方で暮らしている分、来る前はもっと家に閉じこもるかと思っていましたが、意外と遊びに行けるところもあって、逆にアグレッシブになりました。街住まいだと街で完結してしまうけど、田舎だとなおさら動いてどこでも行こうと思います。そういう楽しみ方ができるのがいいですね。車があれば富山市まですごく近いと思います。ジョギング中、ワンちゃんといたおばちゃんと話すこともあり、人の温もりを感じます。これからもっと町の人と関わって行きたいです。
――山内さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
「カエルうるさいよ」と電話の相手に言われた…、という山内さんの言葉にハッとしました。当たり前になっていて意識していませんでしたが、それくらい、田んぼにはカエルの声が入り交じっているんですね。田植え前の田んぼに水が張られ、オタマジャクシが育ち、たくさんのカエルになる。田んぼの上空にはツバメが飛び交い、夏に山あいの水辺に行くとホタルを見ることもできる。秋にはコオロギやスズムシの声。そんな生き物たちとの暮らしは、四季を感じさせ、心豊かな時間を過ごさせてくれていることに改めて気付きました。
山内さんは喫茶店が好きだそうで、「まだ行きつけはないので、ゆっくりできるところを探したい。生の声が載った情報誌があると嬉しい」と話してくれました。そこで、冊子「はたらく企業コネクション(現・はたらくらすコネクション)in上市vol.1」と冊子vol.2をご紹介。飲食店のページを持ち歩くのもオススメですよ。
上市町には空き家も多くあります。山内さんと同じく、私も家を見るのが大好きなので、何らかの形で活用されるといいなぁと思います。