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地元への思いと挑戦、上市町産ブランド牛誕生
株式会社 K・MEAT
上市町若杉に本社工場を置く食肉卸企業の株式会社K・MEATは2020年富山市のSOGAWABASEに新業態である「Beef Kitchen by K・MEAT」をオープンし2021年には独自のブランド上市町産黒毛和牛「劔」の販売を開始。コロナ禍におけるこれらの挑戦の真意に迫ります。
縁あって上市で独立
――K・MEATさんの事業内容は?
業務用の食肉卸です。
富山県内のホテル、レストラン、焼肉屋、ラーメン屋、洋食、和食などの飲食店に
ご要望に応じてスライス・ブロック・ひき肉などに加工してお店に配達するというのが創業当初からの事業スタイルです。
昨年から富山市のSOGAWABASEに小売と飲食スペースを併設した「Beef Kitchen by K・MEAT」という新たな業態をスタートさせました。
それと、今年に入ってから上市町の池田畜産さんと提携して上市町産黒毛和牛「劔」というブランドを立ち上げて卸と小売りの両方で取り扱っています。
――起業の経緯は
私は愛知県出身で富山に移ってきて就職したのが精肉問屋でした。
そこで営業責任者まで勤めさせていただいたのち、独立してK・MEATを立ち上げました。
――上市で起業された理由は?
元々営業を担当していた地域ということもあり、縁あって上市の肉屋さんの冷蔵庫と冷凍庫を間借りさせていただくことができて、事業をスタートすることができました。
当時機材も資金もなかったので快く家賃契約で貸していただけて本当に助かりました。
その後若杉の今の本社工場を持つことができました。
――創業されてどのくらいですか?
2005年に創業しましたので今年で16年になります。
新たな業態にチャレンジ
――創業16年を迎えられる中で、2020年にはSOGAWABASEへの出店、2021年には上市町産黒毛和牛のブランド化という新たな挑戦をこのコロナ禍というタイミングに踏み切られたのはどんな思いからですか?
コロナになる前からSOGAWABASE出店の話はいただいてたのですが、はじめは断っていたんです。飲食店をやるとなると既存の取引先と競合のような形になってしまうので。
でもコロナ禍になったことで、何か今までやってきていないこともやらなくてはいけないという思いに至って、新しい業態にチャレンジする事を決心しました。
色々と固定費もかかりますが、スーパー営業マンを1人雇ったと思って、アンテナショップのような位置付けで店づくりを練っていきました。取引先との競合しないように、あくまでもレストランのような形態ではなくショーケースに並んだお肉を購入してお客さんの方で焼いていただく「セルフステーキ」という形態を打ち出しました。
――実際オープンされて反応はいかがですか?
店をオープンして業務用の取引では売りにくいものが小売りではよく買っていただけたり、色々と気付かされることがあってとても勉強になってるんですが、
一番嬉しかったのは、「上市のお肉屋さんですよね?」とか「私も上市なんです!頑張ってください!」という声をかけてもらえたことです。
上市の方に地元の肉屋として受け入れてもらえたようで本当に嬉しかったです。
――SOGAWABASEのお店ではどのようなお肉を扱っておられますか?
「MEAT & MEET」というコンセプトで
富山の良いものを全国に紹介したい、全国のいいものを富山に紹介したいという思いで、オープン時は、松坂牛・近江牛・飛騨牛・能登牛・氷見牛全部5等級でいろんなブランド牛を扱っていましたが、だけど。
だけど、なんですよ。
――今は違うんですか?
今はもうブランド牛は上市町産黒毛和牛「劔」一本です。
――今年売り出された上市ブランド牛ですね
そうです。
全国のブランド牛を扱ったから逆に違和感感じたんです。
「俺何してるのかな」って。
「なんで地元の牛使わないの?」って
で、地元の池田畜産さんにお話し伺ったらだいたい4等級以上で競りに出していらっしゃる。地元の上市にそういう畜産農家さんがいらっしゃるのに、それを扱わない訳にはいかんやろうと。
「上市のK・MEAT」として地元の人が自慢できるような信頼あるブランド牛を作りたいとアクションを起こしました。
上市町産ブランド牛「劔」
――上市町産ブランド牛「劔」の特徴は?
「劔」の最大のこだわりはメス牛のみに限定しているということです。
オスの方が個体が大きいということもあって、市場に出ているのはオスの方が多いのですが、「劔」はメス牛のみです。
メスの方が脂の融点が低くて肉の繊維が圧倒的にきめ細かくて柔らかい。
つまり、脂が溶けやすくて柔らかい。焼いたら脂のいい香りがするんですよ。
上質な脂なのでサラッとしてもたれない。「劔」を食べていただくとわかります。本当に安定して美味しいです。
オープン当初いろんなブランド牛を扱ったと言いましたが、その中でも本当に美味しいと思ったものはメス牛のブランド牛でした。
なのでオスがセリに出る時は買いません。
――そこまで違いがあるんですね!
はい!
あとこれは売り方の特徴ですが、月に1頭、一頭買いして売り切る形を取っています。
これは卸だけだとまずできません。
なぜなら通常業務用は使う部位が限定されているので半頭買いが多いんです。
一頭買いすると飲食店では使わない部分が余りとして多く出るので。
一方で小売りの場合はいろんな部位が少量ずつお買い求めいただけるのがメリットになりますし、ミンチにしたり加工して使い切ることができるんです。
それが店頭販売しているコロッケやハンバーグです。
ハンバーグは上市町のふるさと納税の返礼品にも登録されました!
こういうことは小売店を持てたからこそできたことです!
「劔」は一頭買いすることでブランド牛として成立しています。
一頭を責任持って売り切るという形がとれることで価格も安定し、生産者の池田さんにも良いものを安心して出荷していただけて、それが商品の信頼につながると考えています。
――なるほど。小売店という新たな挑戦によって一頭を売り切る形態をとることができるようになって、上市町産黒毛和牛のブランド化ができるようになったということですね。
そうです!
地産地消という思いはずっとありましたが、このお店を持つことでそれを形にすることができて、K・MEATの地域の中での役割も見えて来ました。
16年目の新たな挑戦でしたが、16年やってきた今だから実現できたと思っています。
何よりも地元の池田さんという存在と出店のお誘いをいただけてたことのおかげですね.
――起業されて上市っていいなと思うこと
やっぱり剱岳がすごく綺麗に見えるというのもありますし
あと、田舎なんだろうけど、結構栄えてません?住み良くないです?
大きなスーパーもあるし、商店街もあるし、景色のいい場所も多いので居心地のいいところ。電車も通ってるし(国道)8号線もすぐ出れるし、スマートインターチェンジができて高速もすぐ乗れる。
それとやっぱり僕富山市から配達の途中に見える立山連峰、県外から来たときすごい感動しました!うわあ、すげーな!って。富山市の配達途中とかビルの上からとか毎日のように眺めていて、そのなかでもやっぱりひときわ鋭い剱岳。
上市町ってその剱岳の麓のまちで、そこに会社があるっていうそれも嬉しいですよね。
自分の子供の名前にも剱岳から一文字取ったんですよ!
そのぐらい剱岳が好き!
あとはアニメ映画監督の細田さんも上市町の出身ですし、富山の中でも、もっと知名度があってもいいですよね!
上市大好きです!
――今後の展望はありますか?
まずは「劔」を富山県を代表するブランドにしていきたいです。
ブランド牛というのはお子さんでもわかりやすいものなので、上市ってすごいところなんだって誇りに思ってもらえるようにしていきたい。
町のイベントにも出店してみたいと思っています。
それから食育でもお役に立てることがあれば上市町に対する恩返しとしてやってみたいと思っています。
●取材者ITO’s VOICE●
自分の理想を常に持ちながら、外的要因をビジネスチャンスにつなげる河田さんの感度の高さと実行力。そして思い切りよく実行しながら気づきを得て変化させてく柔軟さ、それによってまた思考や商品やお店のブランド価値が高められていくという、後退しないサイクルを作り出し続けておられることは一事業者として非常に学びになります。取り組みとして意図しておられないようですが、持続可能な地域循環を生み出そうとしておられるところが時代とマッチしているとも感じました。上市ブランド牛「劔」のこれからも本当に楽しみです!
●DATA●
企業名 | 株式会社 K・MEAT |
住所 |
本社工場:上市町若杉16-2 |
電話番号 | 076-472-2994 |
ホームページ | https://kmeat.jp |
代表取締役 | 河田 周平 |
事業内容 | 業務用食肉卸売業、小売業、 飲食店経営 |
従業員数 | 16人(男性5人、女性11人) |
福利厚生 |
労災保険、健康保険、 雇用保険、厚生年金 |