-
はたらくらすコネクションin上市 > 移住者の声 > Iターン > ~専業主婦を経て上市町でくもん書写教室を開講~ 静岡県から移住
~専業主婦を経て上市町でくもん書写教室を開講~
静岡県から移住
松平美帆さん
結婚後、平成13年にご主人の祖母の家がある上市町へ移住した松平(まつひら)美帆さん。親兄弟や親友のいない富山での生活をスタートさせた。3人の子育てを経て、子どもと訪れた児童センターや趣味のハンドメイドを通して友人を作ってきた。キジなどの生き物が身近にいて雪の多い、自然に囲まれた上市町での暮らしを楽しんでいる。去年からは毎週水曜にサンシャイン上市でくもん書写教室を開講している。
雪を踏む音の心地よさ
――上市町に来られた経緯を教えてもらえますか?
私は富士サファリパークのある静岡県裾野市出身です。大学で富山県黒部市宇奈月町出身の夫と出会い、25歳で結婚しました。夫は富山県に本社のある会社に就職し、26歳のときに本社へ転勤になったんです。どこに住もうかと考えたとき、上市町には夫の母の実家があり、母はその近くに一軒家を建てて暮らしていたため、同居することにしました。現在は中学生と小学生の3人の子どもと6人家族です。
――富山に来られた時の印象はどうでしたか?
学生の頃から遊びに来ていたんですが、1つ1つの田んぼがすごく大きいですよね。静岡も田舎だったけど、田んぼの規模が違う。もっと小さかったです。それに墓地ではなく、その田んぼの脇にポツンと2~3のお墓があることが今でも不思議です。道路はまっすぐ整備されていて、最初、運転していてすごく面白かったです。次第に同じような景色がずっと続くことにホームシックを感じたり迷子になったりもしましたが…。場所を説明するとき、目印があまりないのには困りました。15年も経てば大分景色も変わりましたね。
――静岡県は雪が降るんですか?
雪は子どもの頃にほんの少し降っただけですね。それでも子どもはみんな大喜びするほどでした。富山では、本当に景色が真っ白になります。ほかに音がない、静かな中にいるとホッとします。雪を踏んで歩くのもすごく好きです。あの雪の音が何とも言えず心地いいです。最初は雪かきをするタイミングが分からなくて、「まだ大丈夫かな」と思っていたらみるみる内に積もってしまい、車を出せずに困ったことがありました。今はもう慣れて、融雪のために水を出しておくタイミングも分かりますよ。
――雪を踏んだときの音、独特の良さがありますよね。食べ物はどうですか?
静岡県も魚が豊富でしたが、富山の魚は種類が違います。太平洋と日本海の違いですね。カワハギやバイ貝は静岡にもありましたが、深海魚の「ゲンゲ」や「シマダイ」はスーパーで初めて見てびっくりしました。
――上市町に来られる前、不安はなかったですか?
それが、何にもなかったんです。むしろ「これからどんな生活が待っているんだろう」とワクワクしていました。生活してみないと分からないし、自分が対応していかなければならないと思っていましたから。実際、来てみると自然がいっぱいで、生き物も身近に接しています。山手ではサルやクマ騒動をよく耳にしますし、キジはしょっちゅう見ます。壁を伝って2階の開いていた窓から入ったのか、ヘビが家の中にいたこともありました。ベランダにツバメが巣を作るのも、全部楽しんでいます。ただ、カメムシはすごく臭いらしく、家の中に出ると家族が嫌がって大騒ぎになります。あんな小さな虫なのに(笑)。
育児の不安と解決策
――生活習慣の違いを感じたのはどんな点ですか?
富山県は共働きが多いですね。上市町には保育園しかなく、幼稚園がありません。だから子どもが小さい時は立山町の幼稚園に通っていました。周りからは「働きに行かんが?」とよく聞かれましたが、私は子育てに専念したかったんです。義母も働いていますし、子どもが小学校から帰ってきた時に家に誰もいないと寂しいと思うので。
――確かに、富山県では働く女性が多いので、きっと悪気はないと思うのですが言われますよね。
そうなんです。悪気のない言葉だと分かっていても、少し傷つきました。私は他県から来ているので、自分の親や親友が近くにおらず、そういう面での不安はありました。生活にも慣れていないうちに子どもができて、家族が帰ってくるまで喋る人がいないというのは寂しかったです。唯一、子どもを連れて散歩できるコースが、田んぼを1枚隔てた向こうにある夫のおばあちゃんの家。誰かと会話ができることがとても嬉しかったです。
何となくですが、最初は富山県全体に壁があり、他県のものを受け入れにくい雰囲気があると感じました。だからその中に無理に入っていくのではなく、自分からよく話すようにしたら、みなさん気さくに話してくれました。児童センター「上市町こどもの城」に行った時も、自分から話しかけるようにしたんです。そうすると友達もできました。
――そうなんですね。
2人目が生まれると、育児生活は目一杯忙しくなり、余計なことを考える暇がなくなりました。それでも、育児の合間にミシンで子ども服を作るのが好きで、イベントに出店もしています。ハンドメイドはストレス解消にもなるんですよ。ハンドメイドを通して友人も増えました。「ラベンダー」という名前で、カミールの中のスーパーにも商品を置いてもらっています。
――すごいですね! 子ども服が作れるママって羨ましいです。お子さんとはどんな風に遊ばれますか?
子どもが草を拾って遊んだり虫を見つけたり…。自分が幼い頃にしてきた遊びを一緒にできるのがいいです。虫の種類は違いますね。私が子どもの頃はトカゲを捕まえるのが好きでしたが、こっちにはあまりいない。ヘビが多いですね。ムカデは大きくて、オニヤンマも身近でいっぱい見ることができます。
――トカゲを捕まえておられたんですか! アクティブですね~。
毎週水曜にくもん書写先生を開講
――去年の10月から「くもん書写教室」を開かれているんですよね。
はい。子どもの下校時間が遅い毎週水曜の14時から18時半に、サンシャイン上市(上市町文化研修センター)でくもんの「ペン習字」と「かきかた」の教室を開いています。小さい頃から書道をやっていたため、好きなことを楽しんで仕事にしたかったのと、知らない土地で働きに出る勇気がなかったので、この道を選びました。現在、年長さんから60代までの生徒さんがいます。開講中の好きな時間に来てもらい、30分から1時間ほど学習します。私にとって、自分が好きで書くだけでなく、人に教えることによって自分も成長していかなければならないと思っています。人の性格や心理も勉強の日々です。
――どうやって生徒さんを集めておられるのですか?
「まいぷれ」に掲載してもらっているほか、早朝や昼間にチラシをポスティングしています。子どもたちも手伝ってくれるので、私1人でポスティングするより受け入れてもらいやすいです。3月、5月、9月、11月は無料体験を行っていますが、随時、見学・入会受付中です。
――月謝はどれくらいですか?
月に4回で、大人4,320円、子ども3,240円です。
――では、最後に今後の展望を教えてください。
パソコンばかりの時代、書くことが見直されてきているので、もっとくもん書写教室を知ってもらい生徒さんを増やしていきたいですし、ハンドメイドの方も頑張って、ものづくりで若い世代を盛り上げていきたいと考えています。上市町には革小物を作っている伊東さんもいらっしゃいますし、一緒に何かできればいいなと思っています。
――いいですね! 松平さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
「富山県は共働き率が高く、保育園の待機児童数も0で働く女性にとって恵まれた環境だ」と思っていましたが、専業主婦の方にとっては肩身の狭い思いをされることもあると知り、目からウロコが落ちたインタビューでした。私は子どもの頃から働く母や祖母の姿を見てきたのでそれが当たり前だと思っていましたが、ほかの角度から見るとそうではなく、富山県全体が共働きを当たり前とする雰囲気を作り上げていたのかなと思いました。立場が変われば見えるものも違いますね。勉強になりました。
働く女性も家庭で子育てをする女性も、お互いに暮らしやすい富山県であって欲しいです。