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バイオリンが「真剣」に見えたバックステージ
上市町のデザイナー伊東です。
先日北アルプス文化センターで開催された、上市町出身のバイオリニスト酒井寛樹さんのふるさとコンサート「クラシックで旅するくるみ割り人形の世界」。
私はチラシポスターのほか、舞台で使用する演出用の劇中画を描かせていただいた縁で、なんと最後のアンコールで演奏家の皆さんと一緒に舞台に上がりアンコールの演奏をさせていただくことに。
ステージマネージャーの沼本さんと私の2人でハンドベルを担当したのですが、2人とも触るのも初めて。
前日のリハーサルで2度ほどと、当日に一度合わせてからの本番でした。
ピアノ兼編曲の小林さんが私たちに音階を振り分けたハンドベルを手渡し、表の拍子で左右どちらの手を振るかだけを書いた即席の譜面を書いてくださいました。
2人が同じ手を振ると和音になるようになっていて、「左右」の表記しかない譜面は子供でもわかる簡単な譜面だったのですが、
私はそれでも左右を間違えそうで手汗が止まりませんでした。
なぜなら譜面には「右右左右」ではなく、
「RRLR」と書かれていたのです。。。
演奏家の方は海外で修行されることが多いため、きっとLとRが常用表記なんだな!
と悟りました。
えっと、RはRightで右、LはLeftで左(汗)。
本番では、「お手数ですが日本語に書き直していただけますか」と恥を忍んで言えなかった自分の責任を取るように
必死に脳内で翻訳して演奏していました。
あとで沼本さんに話したら、同じことを考えておられたそうです(笑)。沼本さんは普段は建設現場の現場監督なので(笑)。
今思えば、本番前に自分で書き直せばよかったのですが、デキる男を演じてしまったのですね。
それはさておき、私はこの時初めてクラシックコンサートの裏側をずっと見ることができました!本当に興味深かった!!
リハーサルでは音の強弱や間の取り方、全体の流れや人の動きなどを、演奏を合わせながらその場でどんどん作り込んでいくのです。
なんだかデザインの仕事のプロセスと似てるところがあって非常に面白かった。
でも一番印象的だったのはやはり本番。
それも裏側の空気。
仙台フィルハーモニー管弦楽団で、映画「剱岳点の記」の劇中曲の収録にも参加されているバイオリニストの長谷川康さんが、
最初の演奏を終え舞台袖に戻ってこられた時の第一声。
「はぁぁ 緊張したぁ」(小声)
!!!?!
仙台のFM局で15年レギュラー番組を持っている人が!!
緊張しているのです。
他の方も一様にそう。
まるで今から真剣を持って決闘に行くような、そんな研ぎ澄まされ、張り詰めた空気が舞台裏には漂っていました。
普段は60人ぐらいのオーケストラで演奏されているのが今回は5人のアンサンブルということで、普段とは全く違う緊張感があるのだそうです。
まさに戦ではなく決闘。
クラシックファン、そして地域の子どもたちに向けた真剣勝負。
その空気感はまるで、山田洋次監督の撮る時代劇のようです。
山田監督は幼少期に、実際に西南戦争で刀を持っての白兵戦に参加したお祖父さんの体験談を聞いて育ったため、バッサバッサと人を斬るチャンバラ劇に強い違和感を感じていたそうで、自身の時代劇では一太刀を振るう人間の恐怖心や決意というものが丁寧に描かれています。
確かに、たそがれ清兵衛も武士の一分もなかなか刀を抜きませんでした。一太刀にかける1人の人間の物語を描いているのです。
今回のコンサートの舞台裏はまさにそんな空気。
演奏家陣はそれぞれに国内外の大きな舞台を経験しておられる方々。
それらに比べれば上市町の北アルプス文化センターは、地方のごく小さな舞台のひとつであるはずですが、この時ここは紛れもなく演奏家の皆さんにとって世界の真ん中であったと断言できます。
一流の演奏家が「真剣」で臨める舞台。こういう場を私たちがこの町にどれだけ作っていけるかによって、この町に文化の火が灯り続け、夢に羽ばたける地域の子どもが育って行くのではないか!そう感じた今回のコンサートでした。
打ち上げまで参加させていただき、本当に楽しい時間でした。