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お客さんに愛され続けるお好み焼き
おばこ
目の前で焼いてもらえるお好み焼きが420円からと、安くて気軽に行ける店。焼きそば、ラーメン、うどん、スープ、飲み物、アイスクリームもある。山形県出身の店主・高田みつさんが夫の外治さんと一緒にお店を切り盛り。店名は、山形や秋田の方言で「娘さん」の意味。こじんまりとした店内は、カウンターとテーブル合わせて21席あり、昔ながらのどこか懐かしい雰囲気を醸し出している。
※おばこさんは平成28年、閉店されました。
代表 高田みつさん(85)と外治さん(90)
香ばしい匂いが食欲をそそる
――お好み焼きや焼きそばは目の前で焼いてもらえるスタイルなんですね。1番人気は何ですか?
やっぱり看板メニューのお好み焼きが人気だね。自分で焼きたい人は焼いてもいい。天かすと粉末の花かつおが生地の中に混ぜ込んであって、具は肉、イカ、タコ、ハム、昆布、干しエビから選べます。普通の「お好み焼き(小420円、大470円)」にはアレルギーや嫌いな人のために卵が入ってなくて、50円で増しで卵かチーズが入れられます。「特製お好み焼き(並550円、大600円)」は卵ととろろ入りで、具が2種類選べる。マヨネーズは嫌いな人もいるので、かけずに後付けします。青のりは、食べた後に歯に残らないようきめ細かい粉末にしました。
――細かい青のりがとっても美味しそうだと思ったら、そんな配慮があったんですね。
はい。それに、風味も良くなるんですよ。
台は4つしかないけど電話で注文されることが多いので、取りに来られる時間に合わせて焼いています。1枚につき10~15分かかるので、時間を見て当日でも予約できますよ。近所であれば配達もしています。
――配達までされているんですね。あの、焼きそばにはワカメスープがサービスされるとか。
そうです。「焼きそば(小470円、大520円)」の野菜はキャベツとモヤシ入りで、具は肉、イカ、タコから選べます。チーズ入りは50円増し。「特製焼きそば(並550円、大600円)」はさらにニンジン、タマネギが入って、具も2種類選べます。
――目の前の鉄板でジュウジュウと音を立て、香ばしい匂いがたまりません。ラーメンもあるんですか?
はい。「ラーメン(小520円、大580円)」はしょうゆ・塩・みそがあり、1番人気はしょうゆです。昔ながらのラーメンで、隠れた人気メニューです。チャーシューもうちで煮込んでいて、「チャーシューメン(小600円、大700円)」もありますよ。
――ラーメンまで! ほかに「鍋焼きうどん(550円)」や「氷水(330~370円)」とか、いろんなメニューがありますね。
氷水は夏(6月中旬~8月)だけです。アイスクリームは1年中ありますよ。店頭のケースが壊れてしまったので、奥の冷蔵庫に入っています。
――それにしても、安いですよね。昔ながらの価格なんですか?
ずっと値上げしないようにやってきたけど、材料が高くなってるから7年前から少しずつ値上げさせてもらったんです。それでも、何年も通ってくれるお客さんがいて、ありがたいです。
売薬で訪れた山形で出会い、富山へ
――オープンの経緯を教えてもらえますか?
みつさん 昭和48年に店を開いて、43年経ちます。私が42歳、夫が47歳の時でした。
外治さん 私の出身は富山市水橋なが。昔は売薬しとって、山形に行った時にいつも泊まる旅館の娘がこの人だった。お得意さんと女房の母の友人が仲良かったから結婚を勧められたけど、最初は自分自身が体弱くていつ死ぬかわからんから拒んどったん。女房も嫌がってたし。
――体が弱かったんですか?
外治さん 戦争中に肺炎になってね。昭和16年、16歳で京都府舞鶴市の舞鶴海軍工廠(かいぐんこうしょう・軍需工場)の整備に行った。船底に入って機械を取り付けたり油を洗ったり、潜水艦をいじったり駆逐艦(くちくかん)の整備をしたり…。そこで、船の中で倒れて3日後に目が覚めると肺炎で入院していた。1カ月でまた船に戻ったけど、体が辛くてダメで2回目に入院した時、「お前はもう役に立たない」と徴用(政府による強制動員で兵役を含まない一般業務)を解除された。徴用から帰ってきたら「肺病」だと近所から嫌われたけど、どこのうちも苦しくて働かないわけにはいかなかったから不二越に入った。でも苦しくて病院に行くとすぐに診断書を書かれて辞めることになった。昭和20年、20歳で徴兵検査があって入隊し、東京で7か月間、通信兵として働いていたけど、やっぱり体が辛くてね。「これじゃだめだ」と空気のいいところへ行こうと思った。私の母親の親戚が山形県の庄内で商売してて、「自分の商売をすれば休む時は休める」と考えて売薬の行商許可証を取るために監察へ行き、山形と新潟にお得意さんを作った。その頃女房は、さくらんぼで有名な山形県米沢市の洋裁学校に行きながら家の旅館の手伝いをしとった。女優のあき竹城さんの先輩なんです。その旅館に私が年に2回、2カ月ずつ泊まって顔見知りになった。
――それで結婚を勧められたんですね。
外治さん 昔は泊まる時、1日5合分の米を持ってかんと泊まれんかった。
みつさん 売薬さんの持ってくる米は薬臭くてね…。それが嫌だったんだけど、強く勧められ、結婚して水橋へ行きました。22歳と27歳の時でした。最初は方言も分からず、人の家を間借りして住んでたので苦労しましたよ。
外治さん 私の妹が嫁に来ていてここで肉屋をやってたんだけど、中町へ引越すのでここへ来て商売したらどうだと言われた。
みつさん 私は水橋の友達のお好み屋で手伝ってたから、改装してお好み屋さんにしたんです。その頃はこの上市町にお好み屋さんも十数軒とたくさんあった。でも競争とかじゃなくて食べるため、生活するためにやってきたが。いつの間にかみんな辞めてかれて、うちだけになりました。初はお好み焼きと焼きそばだけだったけど、お客さんの要望で少しずつ増やしてった。前はカレーやチャーハンもあった。何でもしていたけど、今はできない。
外治さん 初めは女房が1人でやってた。私の体も弱ってきていて、バイクで行ってた山の方の段差が辛くて行商に出られなかったので、昭和60年から私も一緒にやることにしました。
お客さんに愛される故郷の味
――長く続けてこられた理由は?
みつさん お客さんのおかげで続けてこられた。年いってからの内職みたいに思ってしたけど、こい長いこと続いてしまった。昔はコンビニもなく、上市から滑川から、学生さんのたまり場になっとった。昔食べに来られた人が子ども連れで来られるとか、いろんなお客さんがおられるね。若い時に県外へ出た人でも、お盆やお正月に子どもを連れてきてくれることがある。「おばこのお好み焼き食べんと帰ってきた気がせん」って言っておみやげに買ってってくれるけど、途中の電車の中で全部食べてしまうがやって。やっぱり、鉄板で焼いたがはうまいがやと。大岩で買った腰痛のお守りを持って来てくれる子もいた。食べてもらってこっちの方がおみやげあげんといけんくらいながに。お客さんが昔を思い出して来てくれるのが何より楽しみ。
――故郷の味で愛されているんですね。
みつさん 愛嬌も対してないんだろうけど…、自然体だね。格別なことをしているわけではないから。こんな雑な店ないよー(笑)。来る人みんな友達になった方がいいと思っとるから、そういう口の利き方になってる。おべんちゃらとか好きでないから言えるわけでもないけど、「ありがとう」という気持ちは伝える。土木工事に行かれる人とかちょこちょこと来られるし、ほとんどみんな顔わかってしまって、友達みたいなもんだちゃ。ただ平生の付き合い、友達同士みたいな交際でいきたい。お客さんとの駆け引きとかそういうことは絶対ない。1日おきに来てくれるひととか1週間に必ず1度来られる人も。みんなに助けてもらって私ら生きとんがって、そういう感情しかない。
――やりがいを感じられるのはどんな時ですか?
みつさん 食べて残していかれる人がいないのが嬉しい。お腹いっぱいになったら「腹うーて(お腹苦しくて)食べれんから包んで」って言われて持って帰られる。ありがたいことに「ごっそさん」とか「ありがとう、また来るね」って言って帰って行かれる。お客さんが花や野菜を持って来てくれることもあります。
――テレビで取材されることもよくありましたよね。
外治さん 最初、週刊誌が取材に来て、その後テレビなどが来た。わしら宣伝したことは全然ないが。ありのまま。お客さんからも、「店作った時と1つも変わってない。変わったがはトイレだけだにか」って言われる。
――そういうところがまた魅力なんでしょうね。…では、今後のことについて教えてください。
外治さん 年も年だから、私が肺炎になって倒れてからつるぎの庭にも通っとるよ。誰が跡継ぐわけでなく、わしら1代でおしまいだと思っとる。でも始めたからには最後までやり続けんと、ってそれしか考えてない。この店欲しいっていう人がおったとしても、手かける(補修する)のが大変だろうと思う。最後はどういうことになるかわからんけど、それまで動ける限りは動きたい。
みつさん 当たって砕けろっていう気持ちだね。
――そうなんですね。今日はたくさんお話ししてくださってありがとうございました。
みつさん・外治さん こちらこそ、ありがとうございました。
いつ訪れても変わらない味と笑顔で迎えてくれる、おばこのみつさんと外治さん。お冷は水ではなくて麦茶なのも、嬉しいポイントです。
どれも昔ながらの値段で、特にお好み焼きが420円から、卵スープが100円という、驚きの安さ! 材料の価格高騰で昔に比べて値上げはしているそうですが、それでも何年も通いつづけるお客さんがいるのは、美味しく優しいおばこの味が変わらないからですね。
お店を長くやっていると、昔懐かしいお客さんが訪れることも多いとみつさんは言います。上市高校が近いこともあって、学生時代に通ったお客さんが大人になって再び訪れたり、おばこの味が忘れられず、地元に帰省するたびに訪れる人もいるそうです。店内には、上市高校の卒業生が贈ってくれた南砺市在住の書家・satoshiさんの書もあり、お客さんから本当に愛されていることが分かります。
外治さんが売薬時代に集めた日本全国の民芸品も飾られていて、店の雰囲気にさらに味を出しています。外治さんの戦争中のお話には驚きました。肺を患われたとのことですが、90歳になられた現在もお店に出られています。
昔ながらの雰囲気が残る貴重なおばこさん、これからもできるだけ長く続けていってもらいたい、素敵なお店です。
●おすすめメニュー●
●DATA●
店舗名 | おばこ |
住所 | 上市町南町41 |
電話番号 | 076-472-4543 |
営業時間 | 11:00~19:00(注文があれば時間外も可) |
定休日 | 月曜(祝日の場合は営業し、翌日が休み)、臨時休業あり、1月1日~3日 |
駐車場 | なし(店の前に寄せて止めてください) |
ホームページ | なし |
Facebookページ | なし |
メニュー | お好み焼き、焼きそば、卵スープ、ラーメン、うどん、焼うどん、鍋焼きうどん |
設備・情報 | 予約可、テイクアウトメニューあり、離乳食持ち込み可、ベビーカー持ち込み可 |
代表 | 高田 みつ |
オープン年月日 | 昭和48年5月 |