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建設業と新分野進出の2本立てで地域の活性化を目指す
株式会社山本組
上市町でも大きな観光地・大岩にある建設会社。大岩地区の工事を多く引き受けているほか、砂防工事に強く、県内各地に仕事の幅を広げている。2代目の代表取締役・山本智徳(とものり)さん(60)は建設業の枠にとどまらず、意欲的に新分野へ進出している起業家でもある。大岩観光開発や地元の人達と協力して「大岩不動の湯」やコンビニエンスストアの運営、伝統の土産物の復活など、大岩地域の活性化に尽力している。酒井建設株式会社と山崎コンクリート工業株式会社からの紹介。
技術に投資していいものを造る
――創業からの経緯を教えてもらえますか?
昭和28年に、先代の父・徳義(のりよし)が創業しました。昭和57年に法人化。平成6年4月、創業40周年で父が70歳になったため、私が社長に就任することになりました。38歳の時でした。その頃から改修工事などで仕事量が増え、技術力がついたことが、会社の発展につながりました。
――社長に就任されてから変わったのはどんなことですか?
21歳から働いていましたが、ちょうど古い体質の仕事のあり方が変わってきた時期でした。「ただ、ものを造ればいい」ではなく品質が重視されるようになり、書類関係も厳しくなった頃です。立場的にも業界的にも、世代交替が進む時でした。私は父親世代の中で一生懸命でしたね。その頃は上市町に建設業が約40社ありましたが、今ではその半数ほどです。県と町の建設業協会に残っている中でも、私は古い方です。
――建設業者さんが半分に減少する中、生き残ってこられた強みは何でしょう?
地の利、つまり地域に仕事があったことです。大岩は上市町の中でも大きな観光地でもあり、官庁関係の仕事も多いほうです。白岩川水系大岩川の砂防堰堤や橋の改修工事・耐震化、大岩親水公園の整備なども行いました。それらを地道にこなす中で認められてきたように思います。
――去年、大岩山日石寺の境内へ続く道の石畳の整備も、山本組さんがされていましたね。
はい。大岩から上市町、県内へと仕事の幅を広げています。そのほか、うちが得意とする砂防工事では通常5年~10年、継続的に仕事が入ります。
現在、立山土木事務所が管轄している常願寺川圏域の砂防堰堤が古くなってきたため、その補強工事もしており、その他数か所を工事中です。大岩の「第2号砂防堰堤」は、平成11年、景観にマッチする砂防堰堤としてこの地区で初めて造ったものです。堰堤の横には、砂防教室に参加した、当時の陽南小学校の児童が書いた名前を記した石碑があります。
――小学校と言えば、耐震化などもされているんですか?
はい、上市町内の小学校の耐震化は大分終わりましたね。酒井建設さんともジョイント(ジョイントベンチャー、大規模工事を共同で施工すること)を組ませていただいて白萩西部町営住宅や陽南町営住宅を建設してきました。酒井建設さんにはとても助けていただきました。
――そうなんですね。お客さんに対して大事にしているのはどんなことですか?
「とにかくいいものを造りたい」それしかないです。官庁関係の仕事が多いのですが、いいものを作れば自然に自社のプラスになっていく。いいものを造るということは、余裕をもって安全にも注意しているということ。従業員のうちほとんどが技術者で、一級土木施工管理技士の資格を持っています。一級建築士もいます。平均年齢は40代くらいです。昔はハンマーが主流でしたが、今はパソコンが欠かせません。
現場監督には早い段階から全員にパソコンを持たせました。自分で管理し、打ち込むことで内容もさらに理解でき、相手先ともつながることができます。
――時代を先取りされてきたんですね。
技術力を得るために日々努力してきました。技術に投資することは、長い目で見て帰ってくるだろうと期待しています。どんどん次のことを考え、みんなで努力して覚えるよう頑張っています。
自社のため、地域のために新分野へ進出
――新分野にも進出されているんですよね。
創業当初は高度成長期とも重なって建設業全体が活気づいていましたが、公共事業も縮小傾向になり、今は業界全体で仕事がない状態です。バブルがはじけ、段々厳しくなってきました。「我々の業界はもうダメだ、何か考えないと…」そんな話ばかり。そこで、新分野に進出することを決めました。アイデアを模索していましたが、結局は地域のために、地元に根付いたことをしていくのが1番いいと思いました。「お不動さんがある」「霊水がある」「冬場は全然人が来ない」それらを総合し、温かいもの…温泉を掘ってみようと思いつきました。
平成17年9月に掘削を始め、富山県の温泉協議会に申請。富山県公衆浴場業生活衛生同業組合に加入して公衆浴場に関する知識を学び、中部厚生センターへ通って法律的なことを学んだほか、県の建設業協会にもいろいろと助けてもらいました。富山県建設業新分野進出事業等支援補助金と創業・ベンチャー挑戦応援事業助成金をいただくこともでき、資金的にも助けられました。
――建設業者さんが新分野へ進出するのを支援する補助金があるんですね。
そうなんです。建設企業の新分野事業への進出を促進することで、それぞれの事業を発展・継続させていくことを目的にされています。私が温泉を始める条件としていたのは、45度以上の高温泉であることと十分な湯量があること。1,500メートル掘ってようやくその条件を満たした湯が出ました。せいぜい足湯程度かと思っていましたが、毎分40リットルも自噴しているので、最初は浴槽だけを持って行って私1人で入っていたんです(笑)。各旅館へくみ上げることも考えたものの、距離と標高差を考え、諦めました。こじんまりとしたいい湯を作ればいいかなと、平成19年1月に建物を建設。平成20年9月にオープンしました。
――入浴料や特徴を教えてもらえますか?
源泉温度47度、イオン物質を多量に含む弱アルカリ性の温泉です。みんなが来やすいように銭湯とし、入浴料は大人420円です。90%地元の杉やヒノキで造り、里山の自然に溶け込むよう和風の建物にしました。お風呂の中もヒノキ造りです。露天風呂、脱衣室、休憩室があります。変わったものとして、「お不動さん」と「六本滝」のステンドグラスをはめこんであります。
ステンドグラスはインドネシアで制作しました。1日に100~150人のお客さん、滑川市や魚津市、富山市、高岡市や石川県からも常連さんが来られます。宣伝しない隠れ湯です。
――中もとっても綺麗ですよね。
私と家内、その他数人で、営業終了後に掃除するんですよ。運動を兼ねてやっています。
――運営はどうされているんですか?
関連会社として「大岩空感(くうかん)株式会社」を立ち上げて運営にあたり、社長は大岩山日石寺の中田弘乘管長、私は取締役を務めています。また、「大岩空感株式会社」では、みなさんの要望を受けて平成24年7月、スーパー農道沿いに「ファミリーマート上市女川(おながわ)店」をオープンしました。コンビニは大岩山への入口にあたる場所にあるため壁に案内図を造り、大岩口交差点に案内看板も立てました。
――次々に大岩関連で異業種へ進出されていますね。
平成24年には、国交省の補助金(建設業と地域の元気回復助成金)を受けた事業で大岩空感(株)に「笹屋来(ささやき)」という部門を立ち上げました。「笹屋来」では、かつて土産品として人気のあった大岩伝統の特産品「大岩笹巻き」を復活させ、製造販売しています。「笹巻き」は大岩に自生するクマザサにお不動さんの剣を模っただんごを包み、日石寺の五体の御尊像(そんぞう)を表して5本の笹だんごを1束にしたものです。300年前からある名物で、昔は近所の女性たちで組織する「笹巻き組合」で作られていたものですが、高齢化や後継者不足により14~15年前に途絶えてしまっていました。それまで作ってきた人が少数になり、製造技術が分からなくなる前にみんなで教えていただきました。上市町の若いお母さんたちが製造に来てくれ、今ではベテランになってきました。全部手作りで、9月中旬になると笹の葉が汚れてダメになってしまうため、7月1日から8月31日までの期間限定商品です。
――大岩のみなさんと協力しながら、地域を活性化されているんですね。
大岩四国八十八カ所霊場石仏整備事業も終わったところです。この10年、新分野の仕事に明け暮れていました。いろんなことをやるのは、全て地域のため。人口が減って限界集落になったら人々から忘れられてしまうので、それを防ぎたい。みなさんから「大岩、元気だね」って言ってもらえるくらいであれば、お客さんにも来てもらえます。大岩へ来られる途中の道でまだ細いところがあるので、そこを町で直してもらいたいと思っています。今、技術以外にもたくさんの投資をしていますが、長い目で見たら返ってくる、そう思っています。
――これだけたくさんの事業を立ち上げていらっしゃると、相談に来られる人もいるんじゃないですか?
来られますよ。でも、「余程の覚悟がないとやめなさい」と言います。新分野への進出は、本気で考えたらやらない人が多いんです。お金がかかる、赤字になる。私のモットーは、「天真爛漫」。「人生には遊びがないと」と思っています。だから覚悟もあり、挑戦できたんですよ。
――なるほど…。では最後に、今後の展望を教えてもらえますか。
この10年、本業の建設業はある程度社員に任せて、ずっと走って来ました。それがやっと終わったところです。会社は会社で、県の優良表彰もいただくなど、順調にやってきています。今は息子が会社に入っているので、後のことを考えていかなければなりません。これからは本業に専念して、負担をかけないようにしていきたいと考えています。今大岩では、日石寺の駐車場へ向かう道路を広げる工事が予定されています。
――わかりました。山本さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
これまで、大岩観光開発さんやだんごやさん、大岩館さん、瀧路さんを取材させてもらってきましたが、山本組さんを取材させてもらえたことで、やっとすべてがつながったような気がします。異業種に参入することは大変だと思いますが、着実に前に進まれている山本さんのお話から、地域の人同士で手を取り合い、協力して未来を作り上げていくことの大切さを感じました。自社を維持・発展させるだけでなく、地域全体のことを考えて事業を拡大していくことは、これからの社会にとって不可欠なことだと思います。
●DATA●
企業名 | 株式会社山本組 |
住所 | 上市町大岩101 |
電話番号 | 076-472-2316 |
FAX番号 | 076-472-6782 |
yamatoku@ma.net3-tv.net | |
設立 | 昭和28年 創業 昭和57年 設立 |
代表取締役 | 山本智徳 |
事業内容 | 土木・とび土工・建築・舗装・管・水 |
主な実績 |
平成25年 陽南小学校大規模改修工事(建築主体工事)、 平成26年 大岩地区景観等整備事業 平成27年~28年 大岩四国八十八カ所霊場石仏整備事業 |
資本金 | |
ホームページ | なし |
Facebookページ | なし |
勤務時間 | 8:00~17:00(7.5時間労働) |
休日 | 第2・4土曜、日曜、年間91日、その他有給休暇など |
従業員数 | 13人 |
過去3年間の売上高 | 横ばい |
過去3年間の採用実績 | 平成26年1人、平成27年0人、平成28年0人 |
福利厚生・情報 | 保険(健康、雇用)、厚生年金、資格支援、子育て支援、 出産祝い金、社員旅行、毎月第2・4金曜にノー残業デーの実施、 関連施設(大岩不動の湯)の利用券配布 |
関連会社 |
【大岩空感株式会社(上市町大松鍋谷3)】 【笹屋来】 |