構想は10年、準備は半年

――創業の経緯を教えてもらえますか？

　20歳から20年間、歯科衛生士として働いていました。南砺市から上市町に嫁いできて、25歳で1人目の子どもを出産後、30歳の頃から自分で事業をしたいと思うようになりました。子どもが小さいうちは難しかったものの、大きくなってからだと今度は自分の体力が心配なので、ずっとタイミングを見計らい、40歳で起業に踏み切りました。

――起業を視野に入れてから、10年くらい構想を固めておられたんですね。

　はい。その間、飲食店をしている友人にリサーチするなど、いろいろ調べてきたんです。実際に動き出してからはかなり短期間でオープンに至りました。平成27年４月20日に前職を退職し、上市町商工会や銀行へ相談。23日には食品衛生責任者の資格を取り、営業許可証をもらいました。

その後、日本政策金融公庫で資金を借りられることになり、町内の不動産店で物件探し。たまたま空き店舗を見つけ、７月10日に購入、工事に入り、３カ月後の10月にオープンしました。

――退職から半年でオープンと、ものすごい速さで進めていかれたんですね。

　自分が本当にやりたいことは、やる気とタイミングが合えばできます。家庭のことは主人が助けてくれましたし、３人の子どもたちも協力して自分達でできることを増やしていってくれました。

ほかにも、いろんな人に助けてもらったんです。看板は書道をしている友達に店名を書いてもらい、ホームページはパソコン教室をしている同級生に作ってもらいました。オープンしてからは、お客さんから「こうしたらいいよ」といろいろ教えてもらい、本当にありがたいです。たくさんの方の助けと、お客さんが来てくれることで成り立っていると、強く思います。

――店内で工夫されたのはどんなところですか？

　小さな子どもさんがいる家族の方も来やすいように、小さな小上がりは撤去してベンチシートのテーブル席に鉄板を入れました。ふたをかぶせられるようにしたことで、幅広い年代の方が来られるようになりました。

創業に最も必要だったのはやる気

――創業されるにあたり、どんなものが必要でしたか？

　資金はもちろんですが、１番必要だったのは「やりたい！」と思う気持ちでした。銀行でも、他店の情報などをどれだけ把握しているか尋ねられ、細かいことも調べて提出する必要がありました。そんなとき、くじけず取り組むことが大切だと思いました。

――補助金も活用されたんですよね。

　はい、上市町空き店舗活用等地域活性化事業費補助金の対象となり、活用第一号でした。補助金のことは知らずに進めていたので驚き、本当にありがたかったです。

――そうなんですね。「陽毬（ひまり）」という店名の由来は？

　陽は自分の名前から取りました。太陽の陽、明るいイメージで、この字は絶対につけたいと思いました。毬は丸い形をお好み焼きの丸と重ねました。丸は縁起が良く、お客様との憩いの輪が広がるように、との思いを込めて陽毬と名付けました。

――お好み焼きのお店にしようと思われたのはなぜですか？

　元々料理が好きで、いろんな人に自分の料理を食べてもらいたいと思っていました。いろいろ考えましたが、１人で切り盛りするには何ができるかと考え付いたのが、自分の得意料理の１つであるお好み焼きでした。全て独学です。家で作るのとは違い、お店をするためには毎日美味しいお好み焼きを提供しなければいけません。開店するまで何軒かのお店へ食べに行き、毎日毎日試作をして、今の陽毬のお好み焼きができました。

看板メニューはニラ&ニンニクの陽毬焼き

――メニューは開店当初よりもかなり増えたんですよね。

　そうなんです。開店当初は「陽毬焼き」と豚玉、えび玉、イカ玉、チーズ玉、焼きそば、焼きうどんの７つしかなかったんですが、お客さんから「豚玉とイカ玉、えび玉があったらミックスもできるね」とヒントをもらって、そこから少しずつ増やしていきました。常連さんからの提案でできたメニューもあります。お好み焼きのメニュー「プレーン」は全てのお好み焼きのベースなんですが、お客さんが「お好み焼きの生地自体が美味しいから、具材なしで食べてみたいな」と言ってくれてできたメニューです。山いもがたっぷり入ったふわふわの生地に卵、天かす、紅しょうがとシャキシャキのキャベツの食感が味わえます。キャベツは全て手切りです。切り方もいろいろ試してみて今の切り方が1番美味しかったので、これからも手切りで作っていきます。プレーンは、肉等の具材がなくてもシンプルで美味しい１品です。

――そのプレーンに豚をトッピングすると、豚玉となるわけですね。いまでは全部でどれくらいのメニューがあるんですか。

　お好み焼き７種類（陽毬焼き、モダン焼き、すじコン玉、ピザ玉、タコ玉、ミックス、プレーン、各500円～1,000円）とトッピング10種類（豚、イカ、えび、たらこ、チーズ、もち、キムチ、コーン、こんぶ、ねぎ、各100円）。目玉焼き（100円）を載せることもできます。鉄板メニューはねぎ焼き（500円）、豚肉焼きそば（500円）、ミックス焼きそば（750円）、焼きうどん（500円）、そばゲッティー（750円）、ほかに牛すじ煮（500円）などのおつまみがあります。

――中でも１番人気はどれですか？

　やっぱり「陽毬焼き」です。豚玉にニラとニンニクが入ったスタミナメニューで、一年を通して人気があります。毎回、これしか頼まれないお客さんもいるくらいです。いろいろ作ってみましたが、1番美味しいと思ったので、店名をつけた看板メニューにしました。ほかには、ミックスやモダン焼きも人気がありますし、ピザ玉は子どもさんに好評です。

――「そばゲッティー」というのは何ですか？

　焼きそば麺のナポリタン風です。常連のお客様からのおすすめの麺で、愛知県から取り寄せています。創業100年の老舗店の麺で、ここの麺だからできたメニューです。ソースの間に甘酸っぱいケチャップ味が美味しいですよ。

みなさまにかわいがっていただけるお店に

――お店をされる上で困ったことはなかったですか？

　そんなにないですね。人と話すのは大好きなので、楽しんでさせていただいています。店内は全部で16席しかないので、大人数で来られると入れない時があり、お断りしなければならないのは申し訳ないと思います。

――お店の情報はホームページやＳＮＳで発信されていますね。

　はい。お客さんに許可をもらって撮影し、Facebookページに写真を載せることもあります。インスタグラムとFacebookページには、毎月初めに営業カレンダーを載せています。それを見て問い合わせされる方も多いです。日曜が休みなのは、まだ１番下の保育園児の子どもがいるから。最近は、連休と重なる日曜日は営業していますので、ご利用いただければ嬉しいです。

――お子さんや家族と過ごす時間、とても大事ですよね。では、最後に今後の展望をお聞かせください。

　子どもが大きくなったら、日曜日も営業していきたいと思っています。また、いずれは鉄板で焼くパンケーキなどスイーツ系のメニューも加えられたらいいなと思っています。いまも、予約いただければフルーツやスイーツ、焼き肉、サラダ等を用意することができます。夜はアルバイトさんもいますが、基本１人でやっているので、なかなか満足な対応ができないこともありますが、ご利用いただけると嬉しいです。小さいお子さん連れで来られたら、タイミングを見てプチゼリーなどをサービスすることもあります。これからも、みなさまにかわいがっていただけるお店であるよう心がけ、たくさんのお客さんに来ていただきたいと思います。

――わかりました。今日はどうもありがとうございました。

　こちらこそ、ありがとうございました。

●おすすめメニュー●

●DATA●

店名	お好み焼き 陽毬(ひまり)
住所	上市町大坪94-7
電話番号	076-473-1086
営業時間	11:30～14:30、17:00～20:00(金・土曜は22:00まで)
定休日	日曜日、第1・第3木曜日
駐車場	なし
ホームページ	http://xn--himari-253eya36b9894auu9b.net/
Facebookページ	https://www.facebook.com/himari1021/?fref=ts
設備・情報	16席、ベンチシートのテーブル席あり、ベビーカー入店可
店主	中村陽恵
オープン年月日	平成27年10月

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