-
はたらくらすコネクションin上市 > 企業・店舗ガイド > 08 定食・レストラン > さぬきうどんのおきつね庵 黒田保廣さん
旬の地場産野菜をトッピングしたさぬきうどん専門店
さぬきうどんのおきつね庵 黒田保廣さん
2016年(平成28年)4月にオープンして以来、瞬く間に人気店となった、上市町唯一のさぬきうどん専門店。自家製の旬の野菜をたっぷりトッピングしたボリューム満点のうどんをはじめ、手作りのサイドメニューも定評があり、リピーターが多い。店主の黒田保廣(やすひろ)さん(61)は上市町役場のOB。早期退職後に香川県のうどん学校で技術を身に付け、夫婦でおきつね庵をオープンした。黒田さんは「上市を元気にするため、少しでも人に来てもらうきっかけにしたい」と話す。
季節ごとに変わる多彩なうどんメニュー
――お店について教えてもらえますか。
「おきつね庵」は、私の実家を改装してオープンした、さぬきうどん専門店です。飲食のできるスペースがあるほか、6畳一間を改装して水道設備やうどん製造の機械を入れ、うどん製造から行っています。お昼の営業がメインで、メニューはコシのあるうどんのほかにとり天(鶏肉の天ぷら)や季節の野菜の天ぷらなどがあります。
――いつもとても賑わっていますよね。
日によってです。1日20人来られて忙しい日もあれば、10人未満でゆっくり過ごしてもらえる日もありますよ。
――季節によってメニューが変わるのも、楽しみの1つですね。
温かい「かけうどん」が450円から、冷たい「ぶっかけうどん」が500円からです。新メニューは常に考えています。暑くなる時、寒くなる時にメニューを入れ替えています。息子たちに試食してもらい、改良してから店に出しています。
中でも、1番人気の「旨辛 肉々みそうどん(900円)」はヒットでした。自家製チャーシューがたっぷり入り、甘みそ・辛みそ・スパイスを混ぜ込んだ、タケノコやシイタケといった具がたっぷりの旨辛肉みそが載っている、辛口のうどんです。旨辛みそはパックで販売もしています(190g380円)。
――美味しそうですね! うどんは全部で何種類くらいですか?
季節によって異なりますが、17種類程度です。温、冷、ざるうどんのほか、2種類のオリジナルカレーうどんがあります。
季節の野菜をふんだんにトッピングしたマイルドな「肉やさいカレーうどん」とスパイスの香り漂う辛口の「釜揚げキーマカレー」があります。「肉野菜カレーうどん」は水をほとんど使わず、玉ねぎとニンジンをすりおろしてうどんの出汁とトロトロになるまで煮込んだカレーです。豚肉と鶏肉が入っています。
――カレーうどんも人気ですね。よくSNSで拝見します。ではお店の名前の由来は?
うどんに山菜を載せたかったんです。元・馬場島荘を営業していた弥助(やすけ)さんの山菜のオードブルのような、山菜のうまみがしっかりと感じられるものにしたいと思いました。それに「おあげ」を加え、最初にできたメニューが「山菜きつねうどん」、それを「山きつねうどん」に。童話の「手袋を買いに」が大好きだったこともあって、店名を「おきつね庵」にしました。ショップカードやキツネのイラストは、プログラマーの息子による手作りです。
――素敵です。ご夫婦、そしてご家族で協力されているんですね。
役場で観光に携わる中、一念発起
――黒田さんが上市町でお店を出されたのはどうしてですか?
1つは、やっぱり上市に来てもらいたいからです。上市を元気にするため、少しでも人に来てもらうきっかけになればと思いました。もう1つは、ここに実家があったことです。店舗を借りて家賃を払う場合は毎月の必要経費が大きくなり、ハードルが高くなりますが、自分のできる範囲でやれば、無理せずお客さんの喜んでもらえそうな価格で売ることができます。
――なるほど。お客さんに、良いものを安く提供できるということですね。オープンに至る経緯を教えてもらえますか。
2014年(平成26年)3月末、58歳で前職の上市町役場を早期退職し、讃岐うどんの本場・香川県の職業訓練校である県立高等技能学校の讃岐うどん課へ習いに行きました。3カ月間、朝からうどんを打って天ぷらを揚げて食べるという授業が中心です。埼玉県や、遠くは北海道の札幌市から来ている人もいました。卒業後、2015年(平成27年)8月に「株式会社 笑(わら)ふーず」を設立し、10月に製造許可を取っておみやげ用のうどんを作りました。11月から実家の改装を始め、床板をはがして断熱材を入れ、押入れは水回りやキッチンに。電気工事以外の大工仕事などはすべて家族でしました。テーブルも、馬場島でカシノナガキクイムシの被害によって枯れてしまった大木を引き取って一枚板にしたものです。改装工事が終わって1か月後の2016年(平成28年)4月24日に、「おきつね庵」をオープンしました。
――自分達で改装されるなんてすごいですね。前職は産業課長として活躍していらっしゃった黒田さんが、早期退職されてまで創業されたのはなぜですか?
私は上市町で生まれ育ち、上市高校卒業後、1974年(昭和49年)から役場に40年務めました。いろいろな課を経験しましたが、辞める前の3年間で初めて産業課へ配属になったんです。ちょうど伊東元町長の「観光キックオフ宣言」があり、職員が倍増するなど、産業課では観光への取り組みに特に力を入れ始めた時でした。観光には人を呼ぶことと事業を始めることが不可欠です。まず特産品を作ろうと、商工会女性部のみなさんと、それまで捨てられていた「種しょうが」を使って、しょうがシロップ「上市でしょうが」を開発しました。そして地元の人たちが何か作った際に気軽に売れるよう、直売所「つるぎの味蔵(あじくら)」を作り、場所を整えました。ものは売るところがあって初めて作れるんです。味噌を作っていた女性グループも、個人的に知っている人にしか売っていなかったので、味蔵で製造と販売ができるようにしました。
――いろんなことをされたんですね。
これらは、少しでも上市町に人が来て欲しいという思いからです。仕事として観光や商工業の振興に携わる中で、自分でも上市町のおみやげを作りたいという思いが強くなっていき、自分でやることを決めました。
――そうだったんですね。
旬の地場産野菜をたっぷり味わえるうどんメニュー
――うどんを選ばれたのはなぜですか?
うどんは日本食、和食、ちょっとした料理など、何にでも合います。人が大勢来てくれる店にしたいと思い、広くアレンジできるうどんにしました。小麦粉はさぬきうどんを作るための粉に、富山県産のものを香りづけに混ぜています。香川県の人はうどんが大好きで、1日3食がうどんでもいいという人が少なくありません。でも、その分野菜の消費が少ないんです。おきつね庵では、野菜をたっぷり食べてもらいたいので、具材の多さにインパクトを持たせ、野菜で勝負しています。野菜は自宅で栽培したものや近所で分けてもらった旬のものを使っています。うどんの上に野菜サラダや天ぷらをたくさん載せているので、うどんが見えないほどです(笑)。
――確かに具材のボリュームにいつも驚かされます(笑)。平日限定の定食もかなりお得ですよね。トッピングも全部手作りなんですよね。
自分のところの味を大切にしたいので、うどんから出汁、トッピングまで全て手作りです。例えば「おきつねうどん」は油揚げを甘く煮たものをパックから出していますが、これもうちで作ったものです。真空パックの機械を持っているので、山菜など季節のものも全部多めに調理して真空パック・殺菌して長期保存ができるように工夫しています。
――真空パックの機械まであるんですか!
はい。カレーも1食ずつ真空パックし、注文が入ったら温めてお出ししています。
――そうすることで食材のロスが出ず、効率的に作れるんですね。素晴らしいです。
ありがとうございます。パックにしたカレーや辛みそなどを活用すれば、いろんなメニューが作れます。料理は工夫、化学の世界ですよ。
――それでおみやげ用のうどんも真空パックで作っていらっしゃるんですね。
はい。おみやげ用のうどんはプレーンのほか、上市町の素材を練り込んだものがあります。乾燥させて粉にしたヨモギやしょうが、地酒・白萩(しらはぎ)を練り込んでいて、全部で4種類です。ただ、実はおみやげ用のうどんと店で出すうどんは違うんですよ。その時その時で美味しいものになるように作っています。うどんは茹であがった時から劣化が始まり、コシ・味が落ちていきます。茹でるのに十数分かかりますが、注文を聞いてから茹でるのはそのためです。おみやげ用のうどんは、自宅でもお店のようなうどんを食べられるよう、生めんで2カ月間、常温保存できるものを作りました。具材のみの「きつねのおみやげ(1袋420円)」も販売しています。
――「里山の駅 つるぎの味蔵」でも置いてありますね。
はい。具材は100%国産の山菜を使い、調味料も無添加にこだわっています。
夜は絶品の居酒屋メニューが味わえる
――うどんが食べられるのはお昼のみなんですよね。
はい、うどんを出しているのは昼だけです。夜は予約があれば営業していますが、うどんなしの居酒屋コースです。
――うどん以外のお料理もとても美味しいと評判ですね。お店をオープンされて1年半くらいですが、既に人気店となられていますよね。
まだまだですが、たくさんの人に助けていただいているおかげです。特にファミリーマート上市中央店の久我さんが「上市町を元気にしたい」とよく来てくれていますし、堀口さんも「カメ活」のイベントをここで開催してくれました。訪れた人が「隠れ家のようなお店だ」と喜んでくれて、リピーターの方も多いです。最初に人を呼んで来てくれたら、呼ばれた人が次にいろんな人を連れて来てくれるなど、好循環が続いています。
――口コミが広がり続けているんですね。では、今後の展望を教えてもらえますか。
とにかく続けていきたいと思っています。お客さんには少しずつ定着してもらっていて、町内外から、県外からも来られるようになってきました。2人でやっているお店なので1日に出せる量は決まっていますが、「上市にこんな店があるなら行ってみようか」「待ってでも食べたい」と思ってもらえるような店にしたいです。
――もう、そう思われていると思います。黒田さん、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
常に新しいメニューに挑戦しているおきつね庵さん。秋メニューの「キノコの森ポタージュうどん(並盛り750円)」は花(食用菊)が散りばめられた、一見洋風の実は和風味。夏にあった「しゃぶしゃぶごまトマつけ汁うどん」はバルタン星人の顔をイメージしたトッピングになっているなど、美味しいのはもちろんのこと、遊び心があるのが魅力の1つですね。
黒田さんは、元々役場時代から、課の新年会で年に1度は夫婦手作り料理を振る舞っていたそうです。オードブルは買ったことがなく、庭でバーベキューをしたこともあるとのことでした。私も夜に懇親会で食べに行ったことがありますが、どれをとっても美味しくてボリューム満点で、みんな大満足していました。 また、中学生・高校生限定の学生割引もあり、「大盛り、特大盛りを並盛りの料金でサービス」してもらえるそう。食べ盛りの学生さんにもってこいですね!
…記事を書いていたら食べたくなってたまらなくなり、早速行ってきました(笑)。
●おすすめメニュー●
●DATA●
店名 | さぬきうどんのおきつね庵(あん) |
住所 | 上市町湯崎野221 |
電話番号 | 076-473-2551 |
ホームページ | https://okitsunean.com/ |
Facebookページ | https://www.facebook.com/okitunean/ |
営業時間 | 11:00〜14:30 |
定休日 | 火・水曜 |
駐車場 | あり(7台) |
店主 | 黒田 保廣 |
オープン | 2016年4月 |