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はたらくらすコネクションin上市 > ブログ > 上市町情報 > 市姫東雲会座談会【後編】
(中編はこちら)
広: 17年ぐらい花屋してたんです。22~23歳ぐらいの時に、ちょっと花屋さんやってみようみたいな。最初に3年働いて、その後富山市の花屋で14〜15年くらい働いて。
黒:へえ〜。
広:その間に結婚して子どもが生まれて、保育園に預けながら花屋さん行って。もう結婚して子ども産んだ時点で、他のところで働けないなって思ってたんですよ。
広:花屋さんってある意味自由って言うか、だからもう会社勤めもできない気がしてきて。
黒:「定刻で何時までに会社に行って」とか「17時まで働いて!」とかそういうんじゃなくて……。
広:うん。ただ自分の中では手に職がつけられたらいいなって。そしたら「どこでも働けるわ」っていう感じで花屋に入ったんだけど、子育てしながらだと、他で働く自信がなくなってしまったって言うか……「他のとこ行って私は役に立つんだろうか?」みたいな。
黒:うんうん。
広:でも、十何年やってくると自分の中の「こういう風にしたい」とか「自分らしい接客がしたい」「自分らしい働き方したいな」って……ちょっともがき始めたの。どうしたらいいかなっていうところで一旦仕事をやめて。
そうなんですね。
広:「自分で起業したいんだけど、どうしたらいいんだろう」と……。周りからは「花屋さんをやってもいいんじゃない」って言われたんだけど、花屋さんの仕事って本当に大変で。
黒:そうだよねえ。
広:年末もギリギリまで仕事だから。物日は絶対休めないって言うか、お客さんおったら、まあ17時で帰りたくても帰れないとか、注文が入ったら18~19時までは当たり前だし。夏もやっぱり忙しい時期は休めないなあっていう感じで、そういうもんなんだろうな……って、ちょっと息苦しさを感じてて……。
広:その中でちょうどガーデニングの勉強もし始めたんですよ。そしたら、同じ植物を扱う仕事なんだけど、流れが違って。切り花は切った時点から枯れていくんだけど、植えたお花って植えた時点から育ってくるんだよね。どっちも綺麗なんだけど、そこにちょっと喜びがあるって言うか。
確かに。そういう違いがあるんですね。
広:自分の中で心の穏やかさがあるなあって気付いて、「それが仕事にできたらいいなあ」って始めたのが2012年です。そこからちょっと勉強し始めて。それまで自分のやってきたスキルと、ちょうど起業塾に入って勉強しながら模索して、3~4年ぐらい経った中で準備しつつ起業して……。
黒:それが何年?
広:起業したのは2017年か2018年かな?
黒:2013年が確か東雲会の創立だったよね。
古:2013年11月ね。
黒:私、2015年の11月にクロポッケを始めたんで、その頃かおりんはそうやって準備しとったんね。
広:そう。準備しとった頃。何をしたらいいんだろうな、と……。
黒:女性のためのプチ起業塾には2014年に入ってきたのね。
広:2期生だからね。入ってきてクロちゃんとかね、知り合って。あと茶木さん。
黒:味蔵のね。
広:そうそう。で、そこから結構「上市づいて」きたっていう(笑)
一同笑い
黒:もう迷子にならんようになってきた?
広:うん(笑)。それで、仕事もちょっとずつ変わりつつある中で「味蔵でバイトする?」って茶木さんから誘ってもらって。
おお!! そうだったんですか〜。
広:味蔵がオープンの時に「スタッフ探しとるから来んけ〜」みたいな感じで。そんなご縁で味蔵のところとクロちゃんとこの花壇やらせてもらうようになって。で、「ガーデニング教室始めよう」っていうので、育てながら月に1回ガーデニング教室でみんなにレッスンしていく。そこから始めて今につながってる感じ。
古:アルプスの湯も……。
黒:そうそう、そうね。
アルプスの湯のお庭も手がけているんですよね。
広:はい、そうなんです。
黒:それで起業塾は役場の産業課に百塚さんが元々おられて、その時ちょうど起業塾の担当だったの。
古:ももちゃん(百塚さん)が「こういうのやりたい」って言って……。
黒:そうそう。上市町雇用創造協議会で。その長が茶木さんだったの。
そうなんですね。
黒:そう、それで茶木さんとももちゃんと雇用創造協議会のスタッフ3人で「女性の起業塾やろう」って講師を探したら、金沢の萩原扶未子先生がヒットした、と。
へえ〜。
古:私、起業年言ってなかった。2015年の3月。
黒:そうか。私よりちょっと早いんだね。
古:実際の司会の仕事始めたのがその1年前だったの。「過去の日付でも良いですよ」って言われたから、開業届に書いた年数は、さかのぼって2014年の3月で出したような気がする。
黒:さかのぼって?
古:うん。さかのぼっても別に良いことなかったけど(笑)
一同笑い
広:申告をそこから出せるの?
古:確定申告自体はその前からずっとやっとるから……白色申告だったけど、開業届出したことによって青色申告になって。
こういう情報交換できるのもいいですよね。
広:そうなの。起業する時って「起業届ってどうする?」とか分からんことだらけで。「青色申告って何?」みたいな。
古:どこに相談しに行けばいいのか分からなかったよね。
黒:そうやね。
いろんな支え合いの形があるんですね。それでは最後に、高校生や若い方へのアドバイスを「高校生の時の自分へのメッセージ」という形でお話していただけますか?
広:私、すごいいろんな人のご縁でここまで来たって言うか。この前高岡の高校で喋ってきた時に……。
一同:すごい〜。
広:すごい下手やったんだけど(笑)
一同笑い
広:でも自分のことずっと振り返ってきて、いろんな道に進んで来たけど……。最初は経理の仕事しとって、花屋さん行って、その後植物関係の仕事して、今ガーデニングの仕事をしています。その中で出会った人や仕事は全然バラバラだと思ったんだけど、何か気づいたらまた役に立っとる。だからいろんなことしても、最終的には人のご縁だったり、自分のやってきたことって、どっかで役に立つから。
広:「必ずこの仕事で突き進まなきゃいけない!」ってことはなくて。どんな形でも、その時その時で何かやっていけたり、本当に昔ご縁があった人との出会いがまた十何年経って仕事につながったりするから、そんな風に思って働いてほしいなって、この間話してきた。
なるほど〜。
広:私、森林研究所にも勤めたんだけど、それって20代の時に入ってた「山の会」で知り合った人に10年ぶりに「ちょうど今仕事辞めたんです」っていうお葉書を出したら、「じゃあ来る?」みたいな感じで誘ってもらって。
一同:へ〜。
広:森林研究所に行って、植物のこととか1年間たくさん教えてもらって、その後植物園に行って、いろんな経験を積ませてもらって今の仕事ができたから。本当に何か……。ちょっと上手く言えないんだけど……。
確かに「一旦就職したらずっと勤め上げるのが良い社会人」みたいなプレッシャーがあるから「そうしなきゃ」って思うわけじゃないですか。若い人も。でも今のようなメッセージを頂けるといいですよね。寄り道していることへの罪悪感を持ったり「1つのことをずっと続けられないな」って思ったりして悩まなくていいよっていうことですよね。
広:ちょっと前に勉強してきたことが役に立つって言うか、例えば自分で仕事を始めた時に経理の仕事してたことも思い出したし、やってきたことってやっぱり役に立つなって思います。
ありがとうございます。
一同拍手
古:私もこの間、オンラインだけど福岡の女子高生たちの前で話す機会があって。その時に言ったのが「失敗してもいいんだよ」ってこと。私もすごいいろんな失敗したし、若い時って「1つ失敗したらもう終わりだ!!」「もうだめだ!」みたいに思ったりしてしまうんですけど、かおりんが言ってたように色んな経験が積み重なって今の自分があるわけだから、失敗すらもその要素の1つだと言える。その時悩んでいた自分には「大丈夫だよ。大人になったら、きっと明るい未来が待ってるから」って言ってあげたい。
古:昔の日記に「どういう大人になりたいか」「経済的に自立した女性になりたい」とか書かれてたりして……。そういう「どんな人になりたいか」っていう目標を書くのも大事だなって思うし、いろんな人とそういう話をするのも大事で。
黒:そうそう。口からね、言葉を出すこと。
古:言霊が宿って、また自分の耳でそれを聞いて、自分の決意にしていくと言うか。
そうですね。そうですね。
古:だから自分で思ってるだけじゃなくて。
黒:そう。人の前で言うとかね。
古:当時は未来についてのこととか誰かに話すことなかったんだけど、人に話すって大事だよね。「こんなこと言ったらバカにされるかもしれない」とか「どうせ無理だって言われるかもしれない」みたいな、そういう恐れとか不安ってどうしてもあるんですけど。
古:でもそれを「うんうん」って聞いてくれる人がいたり「いいね」って応援してくれる人がいたり、そういう人の存在ってすごい力になるし、きっと応援してくれる人の方が多いから、自分がしゃべることで見つけていくことが大事なんだなって思う。
黒:そうだね。
古:そういえば高2の時に海外研修のプログラムがあって、オーストラリアに引率の先生や友達と行ったの。もうそれがすごい……面白い、楽しい(笑)
一同:へえ〜!
黒:高校生でそういうのあったの?
古:うん。それは行っといて良かったなって思います。だから高校生や学生の皆さんには今しかできない経験をいっぱいやってもらったらいいんじゃないかな。インターンシップとかアルバイトかもしれないし、いろんな体験して、それが全部未来の自分につながっているわけだからね。かおりんの話みたいにね。無駄なことなんてないし「どう意味付けするのか」という部分であったりもするわけだし。
「どんな人間になりたいか」というのがすごく響いたというか……。
最近のビジネスモデルって「誰から搾取するか」みたいなところがある気がしていて……。「海外の工場で働く人の生活を苦しめてないのかな」とか、誰かにしわ寄せがいくこと前提のビジネスモデルがすごく多いような気が個人的にしてて。
でもそこに「どんな人間になりたいか」っていう視点があると、やっぱり誰かを苦しめたくはないわけだし、モラル的にも成熟した大人への道が拓けているような……素晴らしい視点だなあと思ってすごく響きました。
古:まだまだ発展途上だけどね。全然満足できるとこまでは行ってないけども。
それって向上心の裏返しなわけですからね。今で満足だったらもう成長しないわけですし、高校生さんもすごく勇気づけられると思います。ありがとうございます。
一同拍手
では黒田さんお願いします。
黒:はい。私はたまたま自営業っていうところに置かれた立場だったので、高校卒業した頃は「こんなところ継ぐのはやだなあ」とか反発ばっかりしてました。「自分は一体何ができるんだろう? 何もできんけど……。進学とかどうやって考えたらいいんだろう」ってすごく不安だった時、興味があった英語の映画やニュースを見ていて、「この人たちが何話してるのか分かるようになりたい」って思って、英語の専門学校へ行かせてもらったの。
一同:おお〜。
黒:それで2年間終わって帰ってきた時に、やっぱり必要とされてる自分がおったのはここで……。「事務とポップ書きして」って言われたら「じゃあそれ一生懸命させてもらおう」と。それでこうつながってきたっていう。ちょうどWindowsの時代で、パソコンの文字の配列が専門学校のおかげで分かっていたの。電気屋さんはそのとき一生懸命パソコンを売ってたので、販売の仕事も自分にできたから、自信が出て楽しかった。その時私の担当はおじいちゃん・おばあちゃんたちで年上の人ばっかりだったんですけど、ブラインドタッチしてたら「うわ〜、すごいね!!」って言われて天にも昇るような嬉しい気持ちになったり。
黒:そうやって地元の人に活躍させてもらったのが、とっても自分の生きがいになってる。それでご縁があって結婚し、子どもができ、子育てしながら自営業の事務をずっと続けていた。そういう感じかな。だから、ないものをねだるんじゃなくて、自分の周りにあるものを見返すっていうのはある程度年齢行った時にとっても大事なことだと思う。
一同:うんうん。
黒:置かれた自分の場所ややっていることを見返すきっかけができればいいし、ひとりでに置かれる場所がめぐってくるかもしれんし、どちらも大事。さっき言われたことと一緒で、私の細胞の1つ1つに染み込んでるのって、何もかもが経験したことだから。
広:そうだね。
黒:もう何もかもが自分の身になるし、何かで役に立つから、決してマイナスのことは1つもなくて。やっぱり大事なことはマイナスの言葉じゃなくて、楽しかったり嬉しかったり、プラスの言葉を口からいつも出してること。そうすると前向きな人が集まって来て交流も生まれるから、当時の自分には「絶対にマイナスなことは口から出さないようにしてね」って言いたい。以上です!
ありがとうございます。
一同拍手
確かに高校生さん達って、正直、田舎から出たいって思ってる人も結構いるわけですよね。その原動力で、逆に都会で花開いたりとかあると思うんですけど。
今のお話聞いてると「こんな田舎出てやる」って思ったとしても、この「田舎」が、実は自分をすごく変えてくれたり、支えてくれる場かもしれないよっていうメッセージかなと思って……。
私もこのお仕事やらせて頂いて「上市っていい町だよ」ってすごく言ってるし言いたいし、それが一番やりたいことなんですけど、やっぱり、高校生さんの中で「こんな町出てやる!!」って思ってる子がいるかもしれない。
で、そういう子がはたらくらすのブログや冊子読んだ時に、私はヨソ者なので、外から来た人が「上市素晴らしい!!」とか言っても「本当のこと知らないでしょ」って感じてしまうかもしれないって思った時に。やっぱり地元出身の方が、こういう「若い時からの価値観から見てみるとこうだよ」ってメッセージをくださるっていうのは高校生さんにとってもすごく良いし、仕事してる私としてもすごく良いメッセージを頂いたなと思います。ありがとうございます。
黒:1回外に出てみても良いしね。
古:外に出たからこそ地元の良さが見えることってすごいいっぱいあると思う。私も子どもの頃とかは、富山は山に囲まれ、北は海だし、何か四方が囲まれてるから「クローズドな感じがするな」っていう気持ちがあったけど、1回出てみたらそうじゃなくて……むしろ「守られてる」っていう風に思えるようになった。台風とかも来んかったり(笑)
一同笑い
黒:災害とかもね。
古:外に出たからこそ客観的に見ることができるって思うから、出てまた戻って来ればいいね。
黒:そうそう、何でもやってみればいいよね。できることはね。
広:出てみると良さが分かるからね。
古:県外から移住してきた人が、この立山連峰を見て「素晴らしい」って言うよね。
黒:珍しいよね。こういう景色。
広:山が近いしね、上市。
古:上市近いよね。滑川より近いよね。滑川は剱岳の手前にすごい大きな山があって、ここまで綺麗に見えなかったりするんだけど。上市はやっぱり近くて綺麗。
そうなんですね。
広:見え方も違うしね。うちは本当に山はほとんど見えんからさぁ。どっちかと言うと、八尾の実家から眺める立山連峰がずーっとつながっとる印象が強い。稜線が連なっているのが、馴染みの立山の印象なんよね〜。クロポッケ来るとすごい身近やし、本当に「上市の人は剱を愛してるんやなあ」っていうのをすごい感じます。
古:福光行った時にさ、山の見え方が全く違って。「同じ富山県内なんにこんなにも違うものなんだ〜」って思った。この辺りならやっぱり剱岳はシンボルみたいなところあるよね。
広:あとはね、やっぱりこっちの東側に山があるっていう感じ。染みついとる(笑)
一同笑い
黒:立山連峰からお日様が昇るし。お月様もね、うん。今日晴れてよかった。本当に。
本当にありがとうございます、お忙しい中……。もうちょっと時間過ぎてしまってるんですよね。2倍ぐらい時間を用意しとけば良かったなって思ってるんですけど。今日語り足りないことはまた伺う機会があったら嬉しいです。よろしくお願いします。本当にありがとうございました。
前編、中編、とお届けしてきた市姫東雲会さんの座談会も、これでお開きとなりました。
会をめぐる色々な方々の働きや、その中でのそれぞれの思いもお聞きすることができて私も本当に良い時間を過ごすことができました。
改めて、黒田さん、古野さん、広世さん、本当にありがとうございました!