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里芋や穴の谷霊水を使ったお菓子を開発
有限会社 花月堂(かげつどう)
上市町特産の「つるぎ里芋」を使ったお菓子「里の彩(さとのあや)」、穴の谷霊水入りのおやき餅といった、上市町の素材を活用して作ったお菓子を開発し、町のPRに一役買っている菓子店。ほかに、きんつば、どら焼き、まんじゅうなど冠婚葬祭の引き出物、出産祝い・入学祝い・結婚祝いの赤飯などを製造販売している。この7月、眼目山立山寺(さっかのてら)のおみやげとして「栂参道(とがさんどう)」という和菓子風の洋菓子を開発し、新たな魅力を発信。お店は南町交差点(上市町図書館のそば)から東へ約100mの場所にある。平成28年にすぐ近くへ移転した。
洋菓子作りを学んだ和菓子屋さん
――お店の創業はいつですか?
元々は、江戸時代から砂糖菓子やらくがんを販売していた和菓子店だと聞いています。ひいおじいさんの時代は熊野町で和菓子屋さんを開いていたんですが、戦争で砂糖などの嗜好品が手に入らなくなり、店ができなくなりました。戦争が終わってから、父の弘之がここで花月堂をオープンしたんです。最初は大福やまんじゅうなど、冠婚葬祭の引き出物が主でした。きんつばやどら焼きなど、当時からある商品は今も変わらずに販売しています。
――森さんは、いつからお店に出られているんですか?
私は高校卒業後、東京の製菓学校へ入学しました。洋菓子の学校だったので、卒業後は東京の洋菓子店で修業しました。24歳のときに富山へ帰ってきて、平成19年に38歳で店の代表になりました。
――花月堂さんは和菓子屋さんなのに、洋菓子の道へ進まれたのはどうしてですか?
うちが和菓子をやってたので、ケーキもできればいいなと思ったんです。実際、Uターン直後はクリスマスケーキなども作っていましたが、ケーキ専門店ができたり、コンビニでもケーキが買えるようになり、やめたんです。やはり和菓子の方が受け入れられやすいと考え、和菓子のみにしました。
――ケーキも販売されてたんですか! びっくりです。
里芋のお菓子・里の彩
――花月堂さんならではの工夫ってどんなところですか?
「土着」という部分で、地域の材料を使った商品開発に力を入れています。商工会青年部に所属し、地域振興を目指す中で、地域色を出した商売の仕方をしたいと思いました。和菓子は日本の文化であり、地域の風習や文化を受け継いでいくことを担っています。そこで、うちで作るお菓子もそれを表現し、伝えていけたらと考えました。
――そういった思いで、上市町特産の里芋を使ったお菓子「里の彩」を開発されたんですか?
そうです。2000年国体のとき(平成12年)、上市町では空手とカヌー競技が行われたんですが、県外から来る人に上市をアピールできるものをと、上市の特産品の「つるぎ里芋」で作りました。
――反響はいかがでしたか?
とても良くて、国体当日は大変人気でした。今では上市の人に認知されています。
――「里の彩」はどうやって作られているんですか?
真ん中が里芋の蜜漬けなんです。洋菓子のマロングラッセの作り方を応用しました。それを黄身あんでくるみ、麦こがし粉(おちらし粉)の皮で包んで焼いて、剱岳の雪景色をイメージした粉糖がかかっています。
――私も食べたことあります。美味しいですよね! 里芋が蜜漬けになっていたんですね。
里芋ってあんまりお菓子に使わないものなので、それを使うにはどうしたらいいか、試行錯誤しました。最初はあんこや皮に練りこんでみたものの、粘り以外の主張があまり感じられず、最終的には蜜漬けにして、形を残して使うことにしました。そうすると、お客さんの反応が良かったんです。表面の麦こがし粉の皮がさっぱりして食べやすいとご好評いただいています。
――なるほど~。蜜漬けの里芋と、麦こがし粉の皮が美味しさの秘訣なんですね。ところで、壁に飾ってある「とやま食の匠」とは何ですか?
県産食材を活用した料理や加工食品を創作し、普及活動を積極的に行う人に県から贈られるものです。この「里の彩」を開発したことで、平成20年に「とやま食の匠」創作の匠部門で認定を受けました。
――そうなんですか。上市町だけでなく、県からも注目されているなんて素晴らしいですね。
眼目山立山寺の新土産・栂参道
――ほかに、穴の谷霊水入りのおやき餅も販売されていますよね。
はい。これはうちの父が昭和45年に、穴の谷にあるお土産屋さんから開発を依頼され、開発したものです。穴の谷の霊水のほかには、よもぎと小豆を使っています。地元のお菓子ということで、お客さんにはこのおやき餅と「里の彩」をおすすめしています。
――こちらは上市町で有名な、穴の谷霊水を使ったおやき餅なんですね。「里の彩」とおやき餅、この2つが上市町のお土産として有名ですよね。
はい。実は、新商品もあるんですよ。
――えっ!? どんな商品ですか?
「栂参道(とがさんどう)」と言って、和菓子風に見せた洋菓子です。眼目山立山寺(さっかのてら)は近年、森林セラピー基地に指定されたんですが、せっかく大勢の人が訪れてもお土産がありませんでした。そこで、眼目山立山寺のお土産を作ろうと開発し、今年の7月に発売しました。抹茶の粉とアーモンドプードルで作ったダックワーズ生地に、白あんと裏ごしした里芋を一緒に炊き上げ、生クリームを練りこんだものを挟んだお菓子です。
――「栂参道」という名前は和風で、見た目はおしゃれな感じの洋菓子ですね。こちらを新たに、発売されるということですね。
そうです。前の住職だった戸田幹隆(かんりゅう)さんが名付けたもので、「朝かす美(み) 栂乃(とがの)木もれ陽 並木道」という歌も詠まれました。以前1度開発したものの、しばらくお休みして、今回新たに作り直したんです。
法事の引き出物は花月堂で揃う
――お客さんに対して、どのようなサービスをしておられますか?
お客さんの要望を遂げられるように、法事の引き出物の注文があった際は、花や果物、ロウソクなど店で扱っていない商品も取り寄せ、必要なお供え物が花月堂一箇所で揃えられるサービスを行っています。
――それはお客さんにかなり喜ばれそうですね。
はい。いろんなお店を回られるのは大変だというお客さんの声に応えました。あと、持ち込みのもち米でおけそく(もち)やおこわなどを作ることもできます。
――もち米を持ち込んでもいいんですね~。自分の家で採れたお米で作りたい方におすすめですね。
はい。その際は、他の家の分と混ざらないよう注意して作っています。
――…ということは、もち米を持ち込まれる方が手間がかかるんですね。
そうですね。1軒1軒、それだけで作らないとならないので手間はかかります。でも、お客さんに喜んでもらえるので、続けています。上市町外からも持ってこられる人が多いですよ。
――それだけ、持ち込みできるお店は貴重だということですね。今後、ほかに挑戦したいことは何ですか?
栂参道が一段落したので、次の商品を開発したいです。「インカのめざめ」というジャガイモを食べた時、これでお菓子を作ったら美味しいかなと思いました。構想があるので、いま畑で育てているところです。お菓子が話題になって、上市でメジャーになっていけば、生産者の方の糧になります。そういった、農商工連携を目指しています。また、12月までにホームページを作る予定です。これからも、地元にちなんだお菓子を開発して、どんどんアピールしていきたいです。
――いいですね! 今後も新たなお菓子の開発を楽しみにしています。森さん、今日はありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
家族経営で地元密着の商品を
森さんの奥さんの知子さんは、栄養士をされていました。家族みんなで仕事をしようと、平成26年の4月から花月堂の製造補助に入ったそうです。知子さんは、「毎日必死です。今までも手伝いはしていたので仕事を見ていましたが、実際にやってみると難しいですね。なかなか思うようにはできないので、仕事を覚えるのに一生懸命です」と話してくれました。家族が一丸となって、上市町産のお菓子の開発にもさらに力が入りそうですね。
初めて「里の彩」を食べたとき、里芋の食感が楽しめる美味しさとアイディアに衝撃を受けました! 今回、その里芋は蜜漬けになったもので、マロングラッセの作り方を応用されたと聞き、納得しました。洋菓子の作り方を学んできた森さんだからこそ、従来の和菓子の製法に洋菓子の技術をプラスして、新発想のお菓子の開発ができたんですね。老舗の伝統を守りつつ、変化を続けてこられたのはすごいことだと思います。
新商品の「栂参道」ですが、見た目はダックワーズという洋菓子、味はゆずの香りがする白あんクリームと抹茶で和風…。不思議な感覚を味わえるお菓子です。どちらももう1個食べたくなる、後を引く美味しさが口に残ります。
おやき餅はまだ食べたことがないので、今度挑戦したいと思います。今後どんな新商品が開発されるのか、楽しみです。
●DATA●
店舗名 | 有限会社 花月堂 |
住所 | 上市町森元町7-6 |
電話番号 | 076-472-2518 |
FAX番号 | 076-472-2518 |
info@kagetudou.com | |
営業時間 |
8:00~17:00 |
定休日 | 水曜、日曜午後、正月は3日まで休業 |
駐車場 | 3台 |
ホームページ | http://www.kagetudou.com/ |
Facebookページ | なし |
メニュー | 「里の彩」、「穴の谷霊水入りおやき餅」、「栂参道」、きんつば、 どら焼き、まんじゅうなど冠婚葬祭の引き出物 |
設備・情報 | 予約可、テイクアウトメニューあり、ベビーカー持ち込み可 |
代表 | 森敦史 |
オープン年月日 | 創業 江戸時代 昭和33年 法音寺28に移転 平成28年 森元町7-6に移転 |