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新しい価値を創造するインサート成形専門メーカー
株式会社コージン
プラスチックに異種物を組み合わせる「インサート成形」専門メーカーとして、国内最高水準の技術を誇る会社。5S活動を推進するほか、社員による作業性向上の発表の機会を設けて意識と技術を高め続けている。3代目の小柴雅信さんは、電子部品や自動車部品はもちろん、他分野にも活用の幅を広げるなど、様々なアイディアを形にしている。工場見学は1人からでも受け入れているので、子どもの社会見学にもおすすめ。上市町森尻にある本社のほか、インドネシアに工場、シンガポールに営業所を持つ。
国内大手家電メーカーとの取り引きから世界へ
――創業の経緯を教えてもらえますか?
昭和49年、じいちゃんがプラスチックの会社を譲り受けて始めた会社です。コージンの名前は、「宏仁(こうじん)」と書いて、「仁義・仁徳を広く集める」という意味が込められています。じいちゃんが「たくさんの人が集まる会社にしよう」と名付けたそうです。サービスエリアの自販機で売られていたどんぶりや固形石鹸の箱、サッシなどの建材部品などを作っていましたが、その後、付加価値を付ける仕事に取り組もうと電子部品の組み立てを始めました。しかしながら外部環境も相まってどん底の時期を過ごした時もありました。その結果昭和59年、私が小学5年生の時に父が社長になり、会社が再スタートを切ることになりました。マイナスからのスタートです。
その中でも、「債務はいらないから頑張ってくれ」と言って支援して背中を押してくださる取引先様もいらっしゃり、なくなった父からはいつも「取引先様ときちんと向き合え」という基本的な考えを教わっていました。しばらくして長野県のメーカー様に仕事をいただけるように父が頼みに行きました。突然現れた父にお客様はもちろん厳しかったのですが他に行く当てのない父は契約できるまで毎日見積もりをもってお客様の工場で待っていました。そんな姿を見かねて当時開発がはじまったプラスチックの中に金属をインサートする「インサート成形の部品をやってみないか」というオファーが一人の担当者の方からありました。それが今の基幹事業の始まりです。当時は誰もやったことのない、初めての試みでしたし、作れば作るほど赤字が続くような難しいものでしたが改善を重ねビジネスとして成り立つようになりました。私が中学生の時には、会社は大手企業から依頼のあった電子部品・初めての自動車部品の仕事もするようになっていました。最初に厳しかったあのお客様が紹介してくれたんですよ(笑)。
その流れで大手自動車メーカーとも繋がりができ、平成12~13年には電気自動車プロジェクトが始まりました。一緒にモーターの部分を作った車は、そのメーカーを代表する電気自動車になりました。平成15年にインドネシアに工場を建設(従業員数72人)し、平成23年にはシンガポールに営業所を開きました(常駐1人)。
――すごい歴史ですね。大きな会社ともたくさん取り引きされてるんですね。
インサート成形というものをやる会社はあまり多くはないですからね。市場も限られており、ニッチな感じです。その中でも、ppm(パーツ・パー・ミリオン、100万分の1の意味)、100万分の1個でも不良品が出たらダメだという考えでチャレンジしていったことが評価されたんだと思います。うちで作っているものはインバーター(直流を交流に変換する装置。エアコンや冷蔵庫のモーターの回転スピードを調整して消費電力を抑えるなど)に使われている樹脂基板などで、どこの家庭にも1つや2つどころじゃなくあるものです。国内の大手家電メーカーで、多分一般的に思いつかれる会社とはほとんど取り引きがあります。今、パワーエレクトロニクス(電力変換と制御を扱うシステム)技術を応用した省エネが叫ばれていますよね。世界のパワーエレクトロニクス市場のシェアの2位と3位が日本のメーカーなんですが、そのどちらも多くに弊社の製品が使われています。
――成功の要因は何だと思われますか?
成功しているかなんておこがましいですが、良かったと思うのは、本当に小さい会社の頃から営業部と開発部を作ってやってきたことです。中小企業だと、社長だけが自ら仕事を取ってくるところが少なくない。それをあえて部署として専門的にしたことで、お仕事が増えてきました。あと、父の言葉ですが、「小ロット、多品種など、人が嫌がる仕事をやらないといけないんだ」といつも聞いてやってきたんです。そうすればライバルが少なくなる。最初はそんな複雑なものしかなかったんですが、今では複雑なものはこの本社で、簡単なものはインドネシアの工場で作っています。
会社は人生の大半を過ごす場
――小柴さんが社長になられたのはいつですか?
10年前、31歳の時です。私は東京の商社で修業していたんですが、29歳の時に突然父が亡くなり、当時経理部長をしていた母が一時社長になったんです。父の夢は海外に工場を建てることでした。あともう少しでその夢が叶うところだったのですが、インドネシア工場のオープン前に亡くなってしまったので、長男の私が父の夢を叶えようと思ったんです。2年後に跡を継ぎ、母は会長になりまし
た。
――社長になられてから取り組まれたのはどんなことですか?
別れる(距離が離れる)と人の心も別れるじゃないですか。そう思い、まず天神町と森尻の工場を1つにしました。平成20年以降は、社員教育のために5Sを通じて工場見学を受け入れています。会社っていうのは、人間として成長できる場でありたいと思うんです。人生の大半を過ごす場として、挨拶やコミュニケ―ションをできるようになってほしい。
だから、見学に来られたら、様々な部署や年代、国籍の社員が案内します。ほかの人に見てもらうことで、評価される喜びを感じられる。私は父のように技術がないので、そういった本質のところに取り組もうと考えたんです。
――なるほど。大事なことですね。
見学に来られたら、また来たくなる会社にすることが大事だと思います。お店もそうじゃないですか。明るい挨拶や活気があると、また行こうという気持ちになる。また、「Q
Cサークル」という業務改善の発表の機会を設けています。社員が18チームに分かれ、就業時間内に月2時間活動しています。自分の意見を言える場になり、部署のコミュニケーションにも役立つんです。半年に1回、大会を行い、グランプリ他、チーム表彰しています。その内1回が忘年会、全体でホテルで行うんです。私はカメラが趣味なので、テーブルを回って写真撮影したり、昔の写真を展示することも考えています。
――素敵な取り組みですね。小柴社長がいつ
も心がけておられるのはどんなことですか?
私自身、常に元気でいなきゃならないと実感しています。自分の仕事を「ものづくり」とは言わない。便利な「こと」を提供していこうと心がけています。
――便利な「こと」、いいですね~。
また、お客様に対しては、自分たちの状況をきちんと伝えるということが大事。お客様だから何も言えなくなるというのは違うと思うんです。言わないと後で迷惑をかけることになること、つまり言うべきことは真正面からきちんと伝えるというのが私のポリシーです。
インサート成形で新しい価値を創造
――今後、挑戦したいのはどんなことですか?
勢いのある会社にしたいです。社員の待遇ややりがいをもっと上げてもらえるような仕組みをつくりたいし、社員がコージンで働いていることに誇りを持ってもらえる、魅力的で人が集まる会社にしたいです。ハイブリッドやパワーエレクトロニクスの分野はまだまだ伸びる。でも、自動車部品はコストも品質も厳しいので、今後海外に流れていく可能性がある。だから既存の製品や技術と同様に違った業界にも目を向けていきたいと考えています。
インサート成形というのは、異種物を一緒にできる、つまりいろんな可能性があるんです。今までは電子部品を小さくできるというのがコンセプトでしたが、違う物質を組み合わせることで新しいものを作る。それを考えていると本当に楽しいですね。インサート成形を使った新しい価値を創造していきたいです。
――小柴さんのお話を聴いていると、何だかワクワクしますね。
インサート成形で何かできないか、考えたくなるでしょう(笑)? ニーズの掘り起こしも大事だとおもいます。アンテナを張り、困っていることを拾い集めていく。発想を考えるのは私たちだけじゃなく、お客様と一緒になんです。いろんなアイディアが出てきたら、一緒に実現する、新しい技術提案を次々に出し、自分たちで売り込みを行うようにしていきたいです。インサート成形は考え方次第で何でもできると思うので、様々な広がりを持っていけますし良い技術があれば特許も視野にいれたいです。
――壁には「挑戦・飛躍」という書が飾られていますね。
「挑戦がない会社には飛躍もない。いろんなことにチャレンジして伸びていこう」という思いを込めて書いたものです。そしてその挑戦した結果が自分たちの会社はもちろん、すべてのステークホルダー(企業活動を行う上で関わる人)のみなさんと共有できるようになっていければとても素晴らしいなあと常に思っています。上市町にはいい企業さんがたくさんありますね。工場は内山精工さんのところみたいに綺麗にしたいし、社員には松井エネルギーモータースさんのところみたいに元気をまわりにふりまきたい。会社は池田模範堂さんみたいに、ほかの模範となるような会社にしたいです。
――本当に、上市町には素敵な企業がたくさんありますね。世界に羽ばたかれるのが楽しみです。小柴社長、今日はどうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
今回の取材を通して、「インサート成形」というものを初めて知りました。小柴社長のお話を聴いていると、本当に可能性は無限大で、アイディア次第でどんなことでもできそうな気がしてきました。
小柴社長は、内山精工の内山社長や松井エネルギーモータースの松井社長と仲が良いそうで、熱い思いを持っておられるのと、お話を聴いていてわくわくするところが共通していました。
コージンさんの社内は5S活動を推進されている通りとても綺麗で、しかも機械のカラーがピンクとオレンジでした。これは、工場の中が殺風景になることが多いため、あえて外観と同じイメージカラーのピンクやカラフルなオレンジを使われているそうです。こんなところにも遊び心があって素敵ですね。
また、社内の一画には上市コーナーが設けられていて、見学に来られる方にPRされているそうです。「はたらく企業コネクションin上市(現・はたらくらすコネクションin上市)」の冊子も置いてくださっていますよ。
不思議なのが、玄関にある本物の桜。特殊なドームになっているため枯れないそうです。見学に行かれたらぜひ見てみてくださいね。
派遣社員の社員登用もあるとのことなので、ここでも「可能性は無限大」ですね。
●DATA●
企業名 | 株式会社コージン |
住所 | 上市町森尻5 |
電話番号 | 076-473-3251 |
FAX番号 | 076-473-2692 |
ホームページ | http://www.kojin.co.jp/ |
soumu@kojin.co.jp | |
設立年月日 | 1974年(昭和49年)2月15日 |
代表取締役社長 | 小柴 雅信 |
事業内容 | プラスチック、インサート成形品の製造・販売、 自動車用電装部品・パワーモジュール・電気部品等の製造 |
主力製品・商品 | 産業用電子部品、自動車用電子部品 |
主な実績 | ・国内と海外の様々な会社や大手家電メーカーとの取り引き ・2013年4月に次世代認定マーク「くるみん」を取得 |
会社・製品の強み | プラスチックに異種物を組み合わせる「インサート成形」専門メーカーとして、国内最高水準の技術を誇る。 |
上市町との関わり・創業の決め手 | 上市町の経営者を中心とする団体「ハッピー上市会」の会場を提供し、町の活性化を推進している。 |
学生へのメッセージ・アピール | 5S活動や品質改善活動を通して社内外で勉強や発表の機会を設け、成長の意識を高めています。 |
Facebookページ | なし |
インターンシップ実施の有無 | あり |
従業員数 | 150人(男性72人、女性78人)(2017年7月現在) |
資本金 | 8,350万円 |
勤務時間 | 8:20~17:30 |
休日 | 週休二日制、土曜・日曜、年間114日、その他有給休暇 |
過去3年間の売上高 | 2014年36億円/2015年25億円/2016年30億円 |
過去の採用実績 | 2015年度 新卒3人 中途4人 2016年度 新卒3人 中途8人 2017年度 新卒6人 中途3人 |
福利厚生 / 従業員特典 | 社員食堂あり、家賃補助あり(県外から来た人)、保険(健康、雇用、団体)、厚生年金、資格支援 (プラスチック技能検定、品質検定など)、その他(研修会、コーチング、QCサークル) |
●インターンシップ情報●
概要 | 高校生は職業体験が中心。大学生以上のカリキュラムではいろんな部署を体験。様々な工程を通してどんな仕事があり、ものづくりの会社が存在するかを理解できる。 |
対象 | 高校生、大学生、短大生、大学院生、専門学校生 |
時期 | 毎年夏、冬~春の就活前 |
日数 | 夏は5日間、冬~春は1日 |
実習内容 | 金型のばらし、射出成形体験、プレス作業、品質パトロール実務など |
実習場所 | 上市町森尻5 |
同時受入人数 | 2名 |
情報 | 富山県インターンシップ推進センターのHPで募集。WEBで登録の上、エントリーできます。 |