上市町ではたらく

由緒あるお店で唯一無二のはんこを

いのうえ印房

明治時代から続く由緒あるはんこ屋さん。細かい作業のできる技術を活かし、上市町はもちろん、富山市など周辺市町村に住むお客さんから、企業や店舗、個人用など幅広く注文されてきた。現在の店長・井上雅喜(まさき)さんははんこ一筋40年。文字のバランスを取り、既製品とは違う唯一無二の印鑑を作ることができる。オリジナリティを求める人や、同じ苗字が多い人にもおすすめ。修理や彫り直しもできる。店舗は上市町役場のそば。

店長 井上雅喜さん(51)

店長 井上雅喜さん

 
 

名字ができた明治時代からの歴史

印譜にある明治時代の直径15mmの印影

印譜にある明治時代の直径15mmの印影

――お店の成り立ちを教えてもらえますか?
 創業は明治元年で、元は上市の西町(にしちょう)にありました。今の代表は父ですが、私で5代目になります。
――明治時代! それはかなり由緒がありますね。
 明治初期から名字が付けられ始め、はんこを作る機会が多くなったことで、需要が増えていったんですね。はんこを明治天皇に献上したという話も聞いたことがあります。

明治30年代に使用された戸籍番号の印

明治30年代に使用された戸籍番号の印

――えっ、明治天皇に! すごいですね。
 今回、取材を受けることになって、昔の資料を探してみたんですが、その中に印譜(いんぷ)といって、うちで作った印鑑を押した資料がたくさんありました。いい朱肉だから昔のはんこでもきれいに残っています。
――これが創業当時からのはんこが押してある印譜ですか。明治何年、と書かれていますね。すごく細かく彫ってある!

電話番号が3桁の時代の印影

電話番号が3桁の時代の印影

そうですね。今はある程度機械で作れるけど、昔は全部手作りだったんです。これだけ細かいものは機械でもできません。
――池田模範堂さんやヤマソさんなど、上市町に今でもある企業や商店のはんこが押されていますね! 町内の方はみんなここで作られていたんでしょうか。
 これを見る限り、昔、今みたいにネット社会になる前はそうだったんでしょうね。先代が、富山市の水橋や浜黒崎まで自転車で配達に行ったと言っていました。

今でも上市町内にある店舗が並ぶ

今でも上市町内にある店舗が並ぶ

昔のはんこは木やゴムを手で彫っていて、写植機ができた40年ぐらい前(取材時より)からは機械でも彫るようになりました。
――そうなんですね。井上さんはいつからお店に出られているんですか?
 私は大学の卒業が近くなってから店を継ごうと思い、写植の学校で学んでゴム印を作るところから始めたんです。はんこ一筋30年です。20年ほど前に、店長になりました。(取材時2014年時点より)

唯一無二のはんこ

昔の「印譜」を見る井上さん

昔の「印譜」を見る井上さん

――いのうえ印房さんの強みを教えてください。
 うちは実印、銀行印、認印、ゴム印など、20~30年と長く使ってもらえる印鑑を作っています。商売をやってると、作りっぱなし、売りっぱなしというわけにはいかないんですよ。修理もできるので、持って来てもらえるとありがたいですね。今でも電話番号の市内局番が現在の「472」ではなく、昔の「72」という2桁のを持ってこられる人もいますよ。前に作られたものを気に入ってくれたお客さんで、「ご縁ができたから孫にも作りたいんです」と来てくれる方も結構多いんです。作りたいイメージを持ってこられたお客さんが、「いいがになった」と喜んでくれると嬉しいです。
――オーダーメードでオリジナルのはんこを作れるんですね。

イラストも入っていた昔のお店のはんこ

イラストも入っていた昔のお店のはんこ

 そうです。日本の制度上、実印が必要なんですが、凝ったものや人と違うものを持ちたいという方におすすめです。文字のバランスを良くして、唯一無二のものを作ります。上市の場合は同じ苗字の方が多いので、そこは違いを出すのに苦労しますけど。同じ漢字でも、はねや止め、旧字などに注意して細かく作ります。
――既製品とは全く違ったものになるということですね。

最近のキャラクタースタンプ

最近のキャラクタースタンプ

 はい。インターネットなどで注文すると勝手に配置されてしまいますが、作り手としてはバランスを1番重視しています。文字によってバランスがものすごく変わるんです。あと、最近では「おおかみこどもの雨と雪」や滑川市のイメージアップキャラクター・キラリンのスタンプを作りました。
――はんこは、値段によってどう違うんですか?
 はんこは個人名や企業名、会の名前などで作られるんですが、予算によって文字を省略する場合もあります。素材によっても変わり、安いものは彫りやすいけど、欠けやすい。1番固いのは象牙ですが、それもピンキリですね。歯なので、削っていると歯医者さんみたいなにおいがしますよ(笑)。親御さんがいいはんこを持っておられたらお子さんも作ろうと思うもので、

サークルKの向かいにあるお店

サークルKの向かいにあるお店

先代が持っていたものを彫り直しに持って来られる方もおられますよ。
――彫り直しもできるんですか。
 水牛や象牙など、いいものであれば8割方、削って彫り直しができるんです。割れてたらダメなんですが。そういうお客さんも多いですよ。

年に1度のはんこ供養

相談して選べる店内

相談して選べる店内

――おすすめはどれですか?
 「Jointy J9(1,500円税込)」ですね。シャチハタ(2,640円税込)のように連続で押せて便利です。シャチハタは押していくと段々薄くなっていくんですが、これは毎回インクが付くのでかすれません。ストラップ用の穴があるので、仕事やイベントの時などに首から下げておくのもおすすめです。
――カラフルでかわいいので、若い人にも喜ばれそうですね。
 はい。あとは実印登録のできる「カラーツゲ(5,500円税込~)」もおすすめです。1番人気はパール系の色です。

表札や名刺、年賀状印刷もできる

表札や名刺、年賀状印刷もできる

――ほかにもいろいろとされるんですよね。
 そうです。表札や名刺、年賀状印刷なども承ります。お気軽にご相談ください。また、毎年1回、10月1日に全日本印章業協会の統一行事として大岩山日石寺ではんこ供養を行っています。
――はんこの供養ですか?
 亡くなられた方のはんこを処分する際、ごみと一緒に捨てるのが忍びない方のためです。県内のいろんなところから持って来られますよ。事前にここへ持って来られれば無料でできます。
――それはいいですね! 井上さん、今日はどうもありがとうございました。
 こちらこそ、ありがとうございました。


売薬さんが薬の袋に押した印影

売薬さんが薬の袋に押した印影

住吉聖雲彫房の印影

住吉聖雲彫房の印影

滑川市の小学校の印影

滑川市の小学校の印影

見せてもらった「印譜(いんぷ)」には、明治時代から昭和初期の様々な印影(はんこを押したもの)があり、上市町や富山県の歴史を感じました。周辺でのはんこ作成を一手に引き受けておられたなんてすごいですね!
売薬さんが使っていた薬の袋用のはんこや、上市町で唯一の彫刻工房「住吉聖雲彫房」さんのはんこ、滑川市の小学校の昔のはんこなどバラエティに富んでいて、とても興味深かったです。私もはんこが作りたくなりました(笑)。
はんこの供養の日があるなんて、初めて知りました。処分したいはんこがある方は、ぜひ前日までにお店へ持って行かれることをおすすめします。
井上さんは象牙のはんこも作られます。中国・北京の国立故宮博物館には、象牙を彫った美術品もあるということなので、1度見に行きたいと思っておられるそうです。

●おすすめ商品●

 
 

●DATA●

店舗名 いのうえ印房
住所 上市町法音寺16
電話番号 076-472-0067
FAX番号 076-473-1003
E-mail masa-rng@ma.net3-tv.net
営業時間 8:30~18:30
定休日 日曜、祝日、お盆、年末年始
駐車場 10台
ホームページ http://inoueinbou.jimdo.com/
Facebookページ なし
メニュー 実印、銀行印、認印、ゴム印、名刺、表札、年賀状印刷
設備・情報 ベビーカー持ち込み可
代表 井上 雅喜
オープン年月日 創業 明治元年
現在の場所には昭和62年に移転

Comments

comments