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強い志とチームの絆で地域の安全を守る
富山県東部消防組合 上市消防署
全国一、出火率が低い富山県の中でも、特に火災の少なさを誇る上市町。それを支える上市消防署は、強い絆で結ばれたチームで火災や事故現場に向かい、人の命や財産を守る大切な業務を行っている。署長の井上寛さんに話を聴いた。消防庁舎は警察署と「トム&ジェリー」の並びにある。
全国一、出火率が低い富山県
――以前は「上市『町』消防署」ではありませんでしたか?
そうです。以前は上市町の管轄だったので「町」がついていましたが、平成25年3月に広域化したんです。魚津市・滑川市・上市町・舟橋村の2市1町1村の消防組織を合併して消防組合を設立しました。魚津市に消防本部を置き、上市の現在の名称は「富山県東部消防組合 上市消防署」。「目指そう無火災の町」がキャッチフレーズです。平成26年10月からは、舟橋分遣所が新設開所し、上市消防署管轄として業務を行っています。
――そうなんですね。では、以前の「上市町消防署」はいつ設立されたんですか?
昭和23年3月7日に「消防組織法」が施行され、自治体ごとに設置されました。3月7日は全国一斉の消防記念日となっています。私たちの1番大きな仕事は、「消防業務」です。被害が大きくならないように力を尽くします。
――全国的に、出火件数はどれくらいあるものなんですか?
消防白書によると、昭和55~56年には9万件(7分に1件)だったのが、平成22年には46,620件、平成29年には39,373件と、出火件数は年々減少しています。上市町では丸焼けになるほどの大きな火災は、年に2~3件まで減りました。
――なぜ減少しているんでしょうか。
火災予防意識の向上をはじめ、住宅用火災警報器の普及、石油ストーブの立ち消え安全装置等の発達によるものです。中でも富山県は平成3年以降、連続して全国で最も出火率が低く、平成29年の人口1万人あたりの出火件数が1.7件(消防庁「消防白書」)、上市町は0.5件(富山県消防課「消防防災年報」)でした。上市町は特に火災が少ないんです。
――上市町に特に火災が少ないのはなぜですか?
上市町は火災予防の意識が強いため、自主防災組織がすべての地区にあり、カバー率は100%です。県内のカバー率が平均79.5%(平成30年4月1日、富山県消防課「消防防災年報」)なので、上市町は高い方だと言えます。昔からの習わしで、火の用心の夜回りをはじめ、年間30組織は救急救命講習など何らかの活動をしています。また、上市町消防団の皆さんの日頃からの活動も大きな役割を果たしています。
――夜回り、見たことがあります!
私は、「地域とともに歩む消防」という心づもりが1番大事だと普段から言っています。その地区の人との共同業務として、地域から愛される消防でないと。地域に溶け込まんと、消防業務というものはなかなか成立せんもんですから。県の総合防災訓練などを通して、防火思想をより広めることが大事です。
救急車は「重篤な症状」でのみ利用すべき
――消防士さんの勤務体系はどんな形なんですか?
1日24時間のうち、時間で割り振ってある特殊な勤務体系です。勤務(当務)→非番(休み)→週休(本来の土日にあたるもの)、の繰り返しです。火災、事故、事件、病人は24時間関係なく発生します。勤務の間は緊張した時間を過ごしています。
――大変なことはたくさんあると思いますが、1つ挙げるとしたら何ですか?
全国的にですが、火災件数とは逆に、年々救急件数が増えていることです。昭和53年、上市町の人口が24,319人と過去50年間のうちでピークだったにも関わらず救急件数は258件だったのが、平成28年には上市・舟橋管内で1,023件、29年には1,089件とおよそ4倍に増加しています。人口から考えても救急件数は多く、増加する一方です。
――それはどうしてなんでしょう。
1つの要因として、高齢化や核家族化によって、家族で病院に連れていくことが難しくなっていることが考えられます。
また、子どもがけがをしても、昔は祖父母の知恵で自宅で処置していたのが、いまは自分たちでとるべき処置ができずに救急車を要請するようになっています。もう1つの要因として、何かあれば自分たちで出来ることを考えずにとにかくすぐ呼ぶ方、何度も呼ぶリピーターの方、中には人だけでなくペットのために通報される方もおられ、国では不適切な救急利用について有料化も検討されています。
――モラルの低下ということですね。
しかし、基本的には救急要請されると断りません。その代わり、お医者さんが患者さんに「こういう程度で救急車を呼んだらいかんよ」と叱られる場面を何度も見ています。
――本来、救急車を呼ぶべき症状というのはどんなものですか?
重篤な症状です。例えば、マヒや脳血管障害、心臓関係は時間との勝負です。外傷による大きな出血もすぐに呼ぶべきです。交通事故の場合は絶対に呼ぶべきです。血が出ていなくても隠れたけがや合併症の可能性もあります。お子さんの熱によるひきつけは1回までは様子を見ていいですが、何回も繰り返す、体温が高くないのにひきつけを起こす場合などは呼んでください。また、全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」というものがあります。救急車を呼ぶべきかどうか、アプリで診断するものです。
――アプリがあるんですか!
はい。スマートフォン版とWeb版があります。ただ、「こういう症状だからどうだ」とか、一概には言えないんです。ですので、当消防本部では断りません。
――なるほど。どういう場合に救急要請するべきなのかを知っておくことが大切ですね。
はい。消防職員の数と救急車の数は限られています。不適切な利用の方のために、より重篤な方が手遅れになる場合があるのです。広域圏になり、他市村から救急車が来てくれるようにはなりましたが、遠くからだとその分時間がかかってしまうんです。
――富山県は救急車の現場到着時間が早いんですよね。
全国の平均が8.6分(平成29年)で、富山県は7分(総務省「平成30年度版 救急・救助の現況」)、東部管内は6.5分、上市町はさらに短く6.1分で到着します。富山県では、たらいまわしもほとんどなく、大きい病院もあって恵まれています。それでも待つ身としては長く感じますよね。「タクシー代わり」に使ったという結果になった方も、本当に不安な気持ちだったのだと思っています。平成27年8月からは富山県にドクターヘリも導入されました。日の出から日の入りまで県立中央病院の屋上に待機し、富山県全域と岐阜県の飛騨地域北部(旧・神岡町あたり)まで10~15分で到着できます。
――ドクターヘリは医師や看護師が乗って現場に向かうものですよね。消防防災ヘリはどんな場合に出動するんですか?
はい。富山県消防防災ヘリコプターは救助が必要な場合に出動します。山火事の消火や人命捜索、ドクターヘリのサブ的出動もします。
――なるほど。
使命感がないとできない仕事
――訓練は毎朝されているんですか?
はい。災害はいつ起こるか分かりません。ほぼ毎日、朝の車両点検後の訓練のほかにも、頻繁にやっていますよ。実際に体を動かしてみないとわからないため、救急もいろんなシミュレーションで訓練しています。医師の研修も毎月ありますし、みんな自分の時間を有効活用して勉強会などをやっています。阪神大震災や東日本大震災の後、消防士になりたいという人がかなり増えました。身近な人が事故に遭うなどの経験をすると、人は何かしてあげたいという気持ちになるものなんです。自分の親や親しい人が救急車の世話になるなど、そういうことがあると使命感が芽生えるんです。そういう気持ちや気構えがないとできない仕事でもあると思います。「14歳の挑戦(富山県が実施。中学2年生が1週間、学校外で職場体験活動をすること)」で消防署に来たのをきっかけに志望する人や、どうしても消防士や救急救命士になりたいと資格を取って県外から引っ越してくる人もいます。そういう志のある人がたくさん入ってくれていることが、地区の住民のためになると思っています。
――使命感がないとできない大変なお仕事ですね。どんな時にやりがいを感じられますか?
人のためになる仕事、地域住民の支えになれる仕事ですが、自分の生きがいにもなっています。「おかげで助かりました」と言われると、やっていて良かったなと思うんです。人のために自分がお役に立てるという喜びがあります。
――若い職員の方の育成についてどのようにお考えですか?
まずは基本をしっかりと覚えてもらうことが大切です。1番最初に火災や事故の悲惨な現場に行くのが、消防士や救急隊です。何をするにも体が資本なので、健康管理と安全管理は特に重要視しています。自分が不安定な状況で、人を助けに行くことはできないですからね。全国的に火災が年々減っていることで、現場での経験が不足しています。訓練では明暗が分からない中で、暑さや音の環境を体感します。その中での判断を伝えていかなければなりません。使命感はあっても現場を経験できないストレスがあるので、それを先輩がケアしていくのです。3交替制なので、火災現場に出る人と出ない人がいて、経験しないまま数年経過する場合も少なくありません。体力的な面のほか、OAの細かい事務処理もありますし、住宅や企業の安全管理指導・査察などを行うために法律の勉強も大切です。
――いろんな仕事があるんですね。火災や事故の悲惨な現場を経験されると辛い記憶が残ることもあると思いますが、それはどのように乗り越えられるんですか。
1人で行くわけではなく、必ずチームで行きます。特別なフォローでなくとも、常に気にかけ言葉を交わしたり、「飲みニュケーション」も手段の1つです。和やかな雰囲気を作って話す中で紛れることもあります。信頼関係が築けないと連携できません。同期や一緒に働く同僚とは、訓練や一緒に寝泊まりする中で長い年月を通して人間関係や信頼関係が身についていくんです。一緒に泣き、喜び、2倍にも3倍にも膨らんでいきます。
――一緒に過ごす時間が長いからこそ、絆が深まるんですね。
はい。家族よりも長い時間を一緒に過ごすことも多いです。みんなはつらつと業務をしてくれているのがありがたいです。厳しいところは厳しく、そうでないところはアットホームという、いい環境の中で勤めてくれているんじゃないかなと思っています。新たに消防署に配属された新人は消防学校に半年入るのですが、出る時には顔つきも格段に違ってきます。みんな真面目でしっかりした子たちなので、今後が楽しみです。うまく育ててやりたいと思っています。
――井上署長、どうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
若手からの声
今年配属9年目の京坂優(まさる)さん(27)は「14歳の挑戦」で上市消防署を訪れ、高校卒業後の進路を決めた一人。
「父が地元の消防団に所属しており、訓練や現場に行っている姿を見ておりましたので、『14歳の挑戦』の場所に消防署を選びました。その時、ここで働く人たちがかっこいいなと思ったんです。自分も野球部で体力に自信がありましたが、『この人たちはもっとすごい』と思いました。消防の仕事が身近に感じられましたし、ドラマなどでも憧れが強くなり、消防士になろうと決めたんです」と消防士になったきっかけを話してくれました。
「私たちが駆けつける現場というのは、事故などの不幸の現場です。被害に遭った方の思いを少しでも和らげることができるように心がけて業務にあたっています。大事なのは、助かる命はしっかり助けるということです。火災は被害を最小限に食い止め、けがはすぐに病院に運んであげることで、後遺症を最小限に留めることができるんです」という言葉からは、消防士としての強い志が伝わってきました。
男の子の「将来の夢」に必ずと言って良いほどランクインする「消防士」。実際に人命や財産を守る消防士・救急救命士として働く方々は、こんなにも頻繁に訓練をして強い志で業務にあたっていることが、改めて分かりました。猛暑の中でも外で訓練をされるなど、体の丈夫さと体力的な強さはもちろん、自制心が大切だと思いました。私たちは、火の始末をきちんとして火災を出さないこと、救急車の適正利用を守ることなどに気を付け、できることで協力したいですね。
ちなみに、消防署を「常備消防」、消防団を「非常備消防」という言い方をするそうで、舟橋村には以前は常備消防がなかったのが、広域化に参加され、上市消防署の管轄になって常備消防ができたそうです。 一般の人が受けられる普通救命講習(3時間)は2カ月に1回、定期的に実施しているとのこと。出張や個別での対応も可能だそうなので、相談してみてはいかがでしょうか。
●DATA●
組織名 | 富山東県部消防組合 上市消防署 |
住所 | 上市町稗田36 |
電話番号 | 076-472-2244 |
FAX番号 | 076-473-0055 |
kamiichi@toyama-toubu119.jp(代表) | |
設立年月日 | 昭和23年3月7日設置 平成25年3月31日設立 |
代表 | 富山県東部消防組合 管理者 村椿 晃 富山県東部消防組合 消防長 中山 明夫 上市消防署長 井上 寛 |
事業内容 | 消防業務 ・警防(火を消す) ・救急(生命・身体に危機が迫った傷病者を病院へ搬送する) ・救助(災害や事故で危険の迫った者を救出する) ・予防(火災原因調査・指導) ・自然災害への防災(未然に防ぐ) ・家屋や神社仏閣等、国宝級の文化財を守る |
主な実績 | 60年以上にわたって地域の安心安全を担ってきた |
勤務時間 | 8:30~翌日8:30(3部制、1日につき7時間45分) |
休日 | 週休二日制、不定、その他有給休暇 |
ホームページ | http://www.toyama-toubu119.jp/(富山県東部消防組合) |
Facebookページ | なし |
職員数 | 22名(その他、舟橋消防署に9名) |
設備 | 上市消防署/消防車3台、救急車1台 舟橋消防署/消防車1台、救急車1台 |
過去3年間の採用実績 | 平成28年 広域職員5人(うち上市に1人) 平成29年 広域職員4人(うち上市に1人) 平成30年 広域職員3人(うち上市に1人) |
福利厚生 | 共済保険、共済年金、子育て支援(育児休暇等) |