上市町でくらす

東大生、富山に帰る-就職編4.東大生は、生きるべきか死ぬべきか-

ハムレット

ハムレット

生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ。

「ハムレット」のこの有名な一文は、次のようにも翻訳されます。
『このままでいいのか、いけないのか。それが問題だ。』
(「平成狸合戦ぽんぽこ」でも引用されていましたね。)

 

ハムレットは父親である先代の王を、叔父である現在の王に殺されています。その復讐を遂げるのが物語の目的です。しかし、ハムレットは叔父を誅殺する機会に多く恵まれながら、中々実行に移そうとしません。
そのため多くの演劇論でハムレットは優秀であるのに行動力が無いと評されます。

 

 

なぜハムレットは行動力がないのか?
あまりにも裕福すぎるから決断力が鈍くなっているのです。
ハムレットはこのまま何もしなくても、第一王子として次期王位は確実で、かわいい恋人もいる。友人にも恵まれ周囲には敵になりそうな人間もいない。もちろん肉体的にも精神的にも健康そのもの。
「どうしてこの恵まれた状況をかなぐり捨てて、命がけの復讐なんてしなきゃいけないんだ?」
あまりにも裕福過ぎて、「心の贅肉」が溜まってしまったのです。(ざわ・・ざわ・・)
結局ハムレットの復讐は、恋人が溺死し、母が毒をあおり、自らの理性と生命さえも失う時になって初めて遂行されるのです。

 

 

現代のハムレットたち

さて、現代にもハムレットのようにあまりにも恵まれ過ぎているために決断力や行動力を損なっている人々がいます。
そうです。東大生の落ちこぼれ、使いづらい東大生と呼ばれる、私のような人間です。

 

学業は優秀で、実家にはそれなりの金があり、「東大卒」という立派な肩書がある。肩書のおかげでちやほやしてもらえるし、就職先も東京で選び放題。
   (ただし、かわいい恋人はいない・・・)
この豊かさが「毒」になっているのです。
自分にとって不都合なことが起きていても『自分には選択肢がたくさんある、未来を楽観視できる』という思い込みが頭に潜んでいるのです。これが行動力を鈍らせている「心の贅肉」です。

 

 

 

 

東大生は、死ぬべきである

使えない東大生を優秀な人材になるには、まさしく「心の贅肉」を取り除く必要があります。すなわち敢えて恵まれた環境を自ら捨てる覚悟が必要なのです。
「選択するとは、選んだもの以外を捨てるということ」
「今すぐ使わないものは、すぐに捨てて、身軽になる」
「すぐに選ばない選択肢は、保留にせずに切り捨てる」

こうした思考パターンがなくては、決断力や行動力は落ちこぼれの東大生には身に付かないのです。

 

 

私が就職できたのも、「心の贅肉」を捨てられたからでしょう。
東京での就職にこだわりがないなら、さっさとUターンしてしまう。
職種は幅を広げずに決め打ちする。
「他人より優れている」ではなく「自分がしたい」に注目する。
給与や待遇は気に留めない。見るべきは業務内容のみで十分。

 

 

素早く動くには、素早く捨てていくべきなのです。
自分が今まで大切にしてきたものであろうとも。
「死ぬ」思いで切り捨てていかねば、正しい道に進んでいけません。

 

 

次回『子育てられ編1.普通の子どもが東大に入るために、一番大切なもの』に続く。

 

ライター:竹島雄弥
富山県立富山中部高等学校卒業
東京大学農学部環境資源科学過程生物・環境工学専修卒業 大学卒業後、ふるさと富山にUターン。プロジェクトデザインに新卒で入社。
事務所内でのもっとも重要な仕事はおいしい紅茶を淹れることである。


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